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予測不能事態発生





びりびり。ぱく。むしゃむしゃ。もぐもぐもぐ。
がたんっばさばさばさ。

「…おお」

一人室内で只管菓子を咀嚼しながらパソコンを弄っていた私は背後からの落下音と何かが散らばる音に鈍く反応してみる。
椅子をくるりと足による力で半回転させ音がした方向を見やると、案の定崩れていた。
何がって、本が。
直すのが面倒臭いと読んでは積んで読んでは積んでと山になりそれなりの冊数になっていた本共が限界を迎え床へと大分ダイヴ(駄洒落?)していた。
…あーぁ、直すの、面倒臭いな
いや、そもそもの原因はこんな風に面倒臭いと片付けるのを敢えてしなかった私の所為なんだけど。何時かは崩れるかなとは思っていたけど。
無残にも床に散乱するモノを座りながら見下ろしてどうしようかと考える。
頭では早く立ち上がり片付けるべきだと判っていても行動に移したくない、ような気もする。
勿論面倒臭いから、が理由である。
ううーん、どうするべきか…(片付けんの面倒だなぁ)

「………………。」

うん、うんうん。
よし、見なかったことにしよう。

手元にあったイヤホンをちゃちゃっと装着して落下音はスピーカーから発されるズズチャチャ音の所為で聞かなかったことに。
くるっとまた足の力で半回転して散らばる物体こと本達は視線の先のディスプレイを凝視しているから、見なかったことに。
うん、万事オッケー。数時間後に振り返って「おお大変だ。崩れてらー」と大物俳優気取って演じれば良いんだ。それでいっか。
因みに片付けるかどうかは決めていなかったりする。
自分の部屋だから誰も怒らないと思うし、多分
まぁめでたしめでたしと自己完結してマウスに手をやりディスプレイに視線を戻した「ん?」何だこれ。

確か先刻までは無かったようなモノが表示されていた。
小首を傾げ横に羅列する文字を字の読めない子供のように一音一音発音してみると

む か え に い き ま す

画面真っ黒(バグ?)でそこに映る言葉。
……………注意。このお話はホラーではありません。
なんて※米印で表記されそうな、一文に「はぁ?」と一人で不満の声を漏らす。誰に言ってるんだろ。
むかえにいきます。迎えに行きます。迎えって何だ。
別に私は外出しているわけじゃないぞ。此処が家だから迎えなんて要りません、よと意味不明な言葉にぐるぐる思考は混乱。あんまり考えさせられちゃうと眠くなるのですが。
さてどうしましょう。
ハゲてないお父さんも口うるさいお母さんもうざったい兄ちゃんも可愛い可愛い妹も、私以外何処かに行ってしまっているので「これ何?」と聞くことも出来ない。全くなんて都合の悪い。
一人で過ごす時間は自由だけど一人というのは何でも自分でしないといけなくなるわけで途轍もなく面倒臭かったりもするよね。だから今家中に響いた来客を報せる「ピンポーン」にも自分が応えなくちゃいけないわけ。

「今出ますよー」

聞こえもしない二階から声を出して部屋のドアノブに手をかけると、別の物音。
ドタバタが3回程響く。私が開ける前に開いたドアは、なんと自動ドアに改造されていたのだった!
…何て事は無く何故開いたのかというと黒ずくめな男の御方が外側から開けちゃったから。
どちらさん?という疑問を投げかける暇も無く担がれ拉致られてしまう。うん、おい

「誰!?」
「申し訳ありません、詳しいことは後で」

グラサンの隙間から見えた瞳は日本人にあるまじき色でその謎の人物は私を担いだまま階段を下りる、足を地に降り立たせる度に緩く振動が伝わり腹部に圧迫感。ぐふっ、なんて二酸化炭素を無理矢理口から吐き出され気分は最悪。というかこの状況で最高だなんて思う奴は変人だ!
一端の凡人気取りの私には何がなんだか判りません。
とりあえず、只ならぬ雰囲気に目を白黒させているうちに車に乗せられた。これまた黒いリムジンカーおお、高級車。じゃなくて。
無言で後部座席に下ろされ扉を閉められ私を担いだ張本人は運転席に乗って、エンジン音。
車が走行開始。
私はどうなる。説明は何時だ。誘拐か。家は中流家庭で搾り取れるもんは何にもありませんが。


舌が回らないので、ちょっと深呼吸。
閑話休題。

「大人しく自首してください!」
「何の話ですか。」

とぼけられた。紡ぐ言葉を失った。


Avvelenamento di
colore primario

(何だと問いたいのは私の方ですが!)






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