小説
先生と僕とお隣さんA
「熱はないみたいだから…暑いんだろうな。花京院、上脱げよ。」
「へ?そ、そんなだいじょ」
「いいから、熱中症かもしれんだろうが。」
有無を言わさぬ強い視線で僕にそう言った空条先生は、「たしか冷凍庫に氷あったな」と部屋の奥にふらっと消えて、またすぐ戻ってきた。僕はまだ服をきちんと着ていて脱ごうともしていなかった。
「おい、花京院。脱げよ。冷やせねーだろが。」
「え、あ、はい。でも」
「でも、じゃねぇ。熱中症だったらやばいだろう。ほれ、ボタン外すぞ。」
でかい保冷剤をソファの上にほおりなげ、先生が僕の胸元のボタンに手をかけてきた。その大きな手からは想像もつかない早さでボタンが外されていく。僕が制止の声をあげる間もなく、真っ白なカッターシャツは剥ぎ取られてしまった。白のランニングシャツを羽織ったなまっちろく、いつも近所の引きこもり(Dioという高学歴のバカ)に貧弱だと馬鹿にされている体が空条先生の目に晒される。
「せんせ…ひゃあぁ!!」
でかい保冷剤が直接腋の下に差し込まれた。恥ずかしさで少し体温の上がっていた体が一気に冷やされる。
「先生!冷たい!!タオル、タオル!」
「ん、あぁ。そういやタオルに巻いてから当てるんだったな。」
はっはっはっ、わりぃわりぃと笑う先生は、まったく悪びれてないように見える。
「うぅ、冷たい…シャツまで濡れちゃいました」
「あぁじゃあそれも脱げよ。日に当ててたらすぐ渇くだろ。」
「え、これもですか!?」
それはちょっと…、と渋る僕を押さえ付け空条先生は笑いながらシャツを剥ぎ取った。先生は学生時代いじめっ子だったのだろうか?
うぅ、これで薄暗い化学準備室に上半身裸の生徒と若い男性教師という構図が出来上がってしまったのか。誰にも見られないことを祈りながら、僕は空条先生が押し当てて来る保冷剤の冷たさに身体を委ねて目を閉じた。
空条先生が「おっなんだ寝るのか」と言っているが、眠るつもりはない。ただちょっと疲れたから。
空条先生と交流出来るのは楽しいけど、こんな変なところを誰かに見られては大変なことになる。
早く帰りたいなぁ、と思った瞬間、胸に鋭い痛みを感じた。
「いたいっ」
目を開けて視線を胸に落とすと、空条先生の手が僕の乳首をきゅっと摘んでいた。
「やっ、先生なにして」
先生は「べつに何も」と言いながら口元に微かな笑みを浮かべて、もう片方の乳首も親指と中指で押し潰した。
「せんせぃ…ぃ、痛いです」
何の意図をもってやっているのかは分からないが、このまま続けさせたら何かが危険だということは分かった。頭の隅で警鐘がガンガンなっている。やめさせなきゃ…。
「やめてください、先生!こんな、変なこと、んぐ」
言い終わる前に空条先生が僕の唇に吸い付いてきた。先生の肉厚な唇がぐいぐいと押し当てられ、先生の舌によってどんどん唇が濡らされていく。
僕はソファに押し付けられ、乳首を弄られ、ファーストキスを奪われた上に咥内を蹂躙されている。健全な一優等生にはあるまじき異常事態だ。先生も一教師にあるまじき行動である。
生徒と教師の淫行、退学といった言葉が浮かんで涙が溢れそうになった瞬間、先生の手がほかられていた僕の制服を掴み、僕に押し付けてきた。
「着ろ。こんなとこじゃ、お前も俺も立場的にあぶねぇ。とりあえず学校出るぞ。」
「は、はい」
切羽詰まった顔と強い口調でそう言われたら、今の僕に拒否する勇気はなかった。のろのろと制服を着て、鞄を持った。空条先生は白衣を脱いでピシッとした仕立ての良さそうなスーツに袖を通した。そして鍵と鞄を掴み、僕を連れて化学準備室を後にした。
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