瞳にうつる君だけを見つめて(獅子) * なんとなく目で追ってしまう。 そう思ってきたのは結構最近のことで、名字の事は今まではただの一人の生徒だったはずだった。 いつからだっただろうか。 こんなにも心がモヤモヤするようになったのは。 それは何の前触れも無く訪れてしまったのだ。 ある放課後のこと・・・ いつも多大な職務で見に行くことが出来ない弓道部に、久しぶりに行ってみることにした。 直「よっ!・・・って誰もいないか・・・」 もうすでに夕方なので当たり前といえば当たり前なのだが… やはり一人だけだからなのか、弓道場が広く感じた。 ガチャ― 『あれ?直獅先生…?』 不意に弓道場に響くはずのない声が聞こえた。 直「あれ…名字?まだ帰ってなかったのか?」 『はい!今日は少しでも長く練習していたかったので…。みんなは先に帰ってもらいました』 顔を上げると名字の切羽詰ったような表情が読み取れた。 ああ、名字は名字なりに悩んでるんだな… 担任としても、一人の男としても…って違う違う! あくまで生徒だぞ、そんな考えは捨てるんだ直獅!! 頭の中にあった邪な考えを即座に打ち消し、どうしたのかたずねてみることにした。 直「何か悪いことでもあったのか…?」 『そんなたいした事じゃないんです…!それに言うのもは恥ずかしいです…』 直「?…大丈夫だ!絶対笑わないから!」 『…本当ですか? ……実は今日残ってたのは…直獅先生に会いたかったからなんです!』 直「……へ?」 『ごめんなさい、意味の分からないこと言っちゃいましたね… いつも元気な直獅の顔が見たいなーなんて思ったんです。そしたらここに来るような気がして…』 その顔はさっきまでの切羽詰った表情ではなく、明るいいつもの笑顔になった。 やっぱりいつものような笑顔はまぶしすぎて、俺の心臓が少し早く動き出す。 その激しい動きは一向に静まることなく、逆にどんどんと早くなっていく。 『だから…ありがとうございます!おかげで元気になりました!』 そう言うと、少し待ってってください!と帰りの準備をしに行った。 そこでぼーっとしていた頭が徐々に覚醒し、ふとあることを思う。 この感情は“恋”なのかと…… 瞳にうつる君だけを見つめて (この感情が“恋”なら…) (それはまわりにまわってたどり着いた青春) ・ [*前へ][次へ#] |