2 「今日は遅いから先に休んでていいわよ」 紅茶の味に満足したのかシュゼットは笑みを深くする。 膝の上に乗って優雅に昼寝中のケット・シーを撫でながら、ニコはこてんと首を傾げた。 「また、いかがわしい集まりでもあるの」 「あら、おませさんね、ニコ」 ころころと鈴の音のような笑い声を上げる彼女に、むうとニコは顔を歪ませる。 「阿片の香りは連れて来ないから安心してちょうだい」 なうぅと、ケット・シー。彼は阿片の香りが大嫌いなのだ。 「じゃあ」 「乱交パーティーなんて、あなたの可愛らしい口から聞きたくはないの」 そう言ってシュゼットは一人掛けの椅子から移動し、ニコの座るソファーに腰を下ろした。 「じゃあ、何なの」 「上流階級とのお付き合いって、とっても大事なの」 「そうみたいだね、三日と間を開けずに出掛けて行くんだもの」 ニコの不機嫌を悟ったケット・シーが膝から下りて、しっぽをゆらりと揺らし部屋から出て行った。 ニコも部屋から出て行きたいと思ったが、シュゼットが彼の茶色い髪を優しく梳いていく。 こういうときニコは少しだけケット・シーの気持ちが分かるのだ。 「危ないことはしないでね」 「心配性なのね」 「結婚相手に相応しい紳士が見つかるといいけれど」 憎まれ口を叩けば、小さな耳朶を軽く引っ張られる。 そして姉が弟にするように、親愛の情たっぷりに抱きしめられた。 「私の可愛いぼうや」 シュゼットはこんな僕が好きだから、 いつまでも大人にはなれないのかな ←→ [戻る] |