言葉のあわ
また明日
大きな古時計が
12時の鐘を鳴らす
さぁ
人間は眠った
今からは
我々だけの世界
暗い影が暗い町を渡る
たくさんの真っ黒な何かは
人間の夢の中へ入り込み
彼らを恐怖に陥れる
その中の一つの影は
ある少女を見つけた
少女はまだ目を覚ましていた
恐怖に目を見開いて
立ち尽くして
影にはそう見えた
一目見て
影は少女に恋をした
怖がらせてごめん
それを言葉で綴る事が出来ない影は
気持ちを込めて手をのばす
少女は笑って言った
こんばんは
あなたはだぁれ
その微笑みには恐怖の影などなく
影はほっとして無い目を閉じた
僕は怪物
夜中に人間を誑かす悪夢
口を持たない影は
その心で少女に語り掛ける
でも大丈夫
僕は君を傷つけたりしない
僕と一緒に遊ぼう
少女は不思議そうな顔をして影を見ていたが
暫くの後
影の手をとった
一緒に遊ぼう
影と少女は暗い町を歩き
町を出た先の野原で二人きりの夜を過ごす
山の端に太陽が顔を出した
影は寂しげに少女の手を離す
僕はもう行かなくては
少女は首を傾げた
明日も一緒に遊びましょ
無邪気に言われたその言葉に
影は心が温まるのを感じた
太陽が昇る
身体が溶けてゆく
さようなら
また明日
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