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君と猫と僕。

海堂薫14歳。青春学園テニス部レギュラーの二年生だ。
通称、マムシと呼ばれ、『ふしゅー…』と変わった息の吐き方をする。
得意科目は英語と家庭科。趣味はバンダナ集めで、好きな色は青。

そして彼は、見かけによらず、『動物』が好きだ。




久々のオフの日だった。空は快晴。降水確率は零パーセント。
頬をなでる微風は非常に心地良い。
新作の乾汁用の買い出しを済ませ、渇いたアスファルトを踏みしめる。
何時もトレーニングで通る公園前を横切ろうとすれば、『チッチッ』と規則正しい音。その音に釣られるように、ピタリと足が止まった。

「…海堂?」

ベンチの目の前でしゃがみ込む見慣れた緑のバンダナ。
珍しい。この時間帯はトレーニングは終わっている時間だし、ましてやこの公園内はトレーニングルートではないはずだ。

何だか新しいデータが採れるような気がして、気付かれぬようそっと近寄った。
海堂から僅かに離れた茂みに位置付け、しゃがみ込んだ背中を見つめてみる。

『ヒマラヤン…、越前のカルピンか?』

海堂の背中越しに見えるフワフワとした物体。
確かいつぞや部室にいたはずだ。記憶とデータが確かならば、あれは越前が飼っているヒマラヤンだ。

そんな事を思い出しながら、海堂を観察していれば、海堂は近くの草むらに生えていた猫じゃらしを一本、徐に引きちぎった。
そして膝が汚れることも構わずに、地べたに四つん這いの姿勢をとり、手元の猫じゃらしを慣れた手付きで動かした。
シュッシュッと地面が擦れる音と、海堂の唇から発せられる「ちっちっ」と云う音が酷く心地よい。

「ほらほら、」

左右に動く猫じゃらしに、カルピンが目で追っている。ハタハタと尻尾が揺れ、遂には手が出始める。
遊びに乗ってきたカルピンに、海堂はふにゃりと笑った。

『…新しいな、』

初めてみた海堂の表情に、今手元にノートがないことを酷く悔やむ。そうだ、デジカメも欲しい。あんな表情は滅多に見れはしない。
何時もの道具がないことを悔やみながら観察を続けていれば、猫じゃらしに夢中だったカルピンが海堂に飛びかかる。
その勢いのまま地面に寝転がり、指を甘咬みするカルピンに海堂は笑いながら「痛い痛い」と抗議し出す。

『…今この瞬間だけでも、猫になりたい』

思わず鼻から赤い液体が滴りそうになって、急いで鼻頭を押さえて緊急対処する。
が、顔を上げれば、未だに地面に寝転がりカルピンと遊んでいる海堂とバッチリ目があってしまった。

「あ、」

間抜けな声を出せば、完全に自分を認識したのであろう、海堂の顔が一気に赤みを帯びてゆく。
カルピンを抱え上げ、勢い良く立ち上がった海堂は、目を見開きながら、酸素の足りない金魚の真似をするばかりだ。

「…やあ、海堂」

こうなっては仕方ないと、覚悟を決めて茂みから這い出て声をかける。
ビクリと大袈裟に肩を跳ねかした海堂は、見開いていた瞳を鋭いものへと変えた。

「な、なんでアンタがいんだっ!」

「買い物帰りだよ。乾汁、新作を作ろうと思ってね」

「じゃあなんで茂みから出てくんだっ!」

「いや、ね。偶々海堂が公園にいるのが見えたから、気になって…」

見る見るうちに怒りと羞恥心で赤くなっていく海堂に、流石に命の危険を感じてくる。マズい。
海堂がぐっと拳を握るのが見えて、防御本能が体を縮めさせた。が、

「ほあら〜」

気の抜ける声。降ってこない拳に目を開ければ、海堂に抱き抱えられたままのカルピンが鳴いていた。

「ほあら〜」

「…、」

カリカリとタンクトップを引っ掻くカルピンに、思わず気が抜けていく。
海堂を見れば、まだ顔は赤いものの、さっきの殺意に近いものはもう見当たらない。

「コイツ、家に帰りたがってるみたいッスから、俺失礼します…」

「え、あ、」

突然掛けられた声に、気を取られれば、海堂はさっさと公園を出て行ってしまった。
慌てて買い物袋を掴んで後を追う。

「海堂、俺もついてくよ、」

「…ッス」

さっきと打って変わって素直になった海堂に、これは猫効果か。と一人考える。
カルピンと海堂のツーショットが可愛くて、ついつい「可愛い」と洩らせば、「先輩、猫好きなんスか?」と微妙な勘違いをされた。
だがここで本心を述べれば、鉄拳が飛んでくるだろうと、取り敢えず頷いた。


君と猫と僕。
(僕も猫が堪らなく好きになりそうだ!)


「海堂、今度一緒に子猫がいるペットショップに行こう」

「、…ッス」


ーーーーー

動物と戯れる海堂たまらんです。アニメでカルピンと戯れる海堂が犯罪級に可愛いですよね。可愛さは罪。
乾→海堂→カルピンくらいで擦れ違ってるのがたまらん。可哀想な乾たまらん。

きっと海堂は人がみていない限り、警戒心零状態で動物とうふふあははするんだな。
なにそれ、可愛い。
猫の日だから猫化!猫耳!なんてやらないんだぜ!


H22.02.22


あきゅろす。
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