「むしゃんよか天気ばい」 部活をサボり、何時もの土手に寝っ転がっている幼なじみはへらへらと笑いながら空を仰いでいた。澄み切った秋の空気がさらりと肌を撫でるのが、部活後の熱くなった身体に気持ち良い。橘はうっすらと目を細めた。 「千歳、部活位には顔ば出さんね、」 「んー、今日は空が俺んこつば呼んどったち、しょうがなかよ」 ごろりと寝返りを打ち、橘の顔を見ながらへらりと笑う千歳は、反省の影がまるでない。反省する気持ちなんてものは微塵もないのだろう。千歳にとって、これはとても有意義な行動だから。 そんな千歳の頭を軽く小突いてから、橘も鞄を土手に投げ出し、すとんと千歳の横に腰を下ろした(「痛かー、桔平」「せからしか、ちょっと黙ってんね」)。 「むしゃんよか天気ばい、」 「なんね、さっきっから」 「空、綺麗な鱗雲ばかかっちょる。こげん綺麗な鱗雲はなかなか見れんったい」 へらりと笑う千歳にそう言われ、引かれるようにして空を見れば、長々と続く鱗雲。高く青い空にグラデーションを描くような鱗雲は確かに綺麗だった。なかなかこんな鱗雲は見れるものではない。うっとりと溜め息を吐けば、隣で転がっていた千歳が目を細めた。 「ほんな、凄かね…」 「へへー」 「なん笑っちょる、」 「んーん、なんも」 鱗雲うらら。 (隣にいるアナタと幸せ、) ーーーーー 二翼って土手に転がってるイメージがある。で、千歳は空見てるか猫撫でてるか。 H22.08.17 |