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X'mas Lovers





──聞きたくない

聞きたくない……

他の誰かを愛していた頃のあの人なんて、知りたくない……!!




「あぁ…気に障った?まぁでも…今はあなたが彼女なんだから別にいいでしょ?」

「…………」

「議長と白服の隊長が恋人同士なんて、まるでドラマみたいだものね。メディア的にも話題性があっていいんじゃない?ねぇ…クライン議長さん」


挑戦的な態度で笑うフレイ。
まるで、ラクスが自らの体裁を保つ駒としてキラを使っているとでも言いたげな台詞だ。


「どういう意味、ですか」

「だってそうじゃない?見たところそんなお熱いカップルでもなさそうだし」


ラクスはその言葉にカッとなって、ベンチから立ち上がった。


「あなたに……っあなたに何が分かるのですか!?私はそんな世間体の為にキラと一緒にいるんじゃありません!!」


こんな大声を出すのはいつ以来だろう。

あの人のことになると、些細なことでも自分を抑えられなくなる──…


「私はキラを何よりも愛してるから側にいるんですっ!!あの方は誰にも…っあなたにだって渡さない!!この気持ちは他の誰にも負けません!!」




息が上がるほど叫んで、溢れ出る涙が頬を伝う。

──ベンチに座ってラクスを見上げていたフレイは、ゆっくりと立ち上がった。


「…合格よ」

「……は……?」


意表を突く言葉に、ラクスは目を丸くした。
すると、フレイは満足げに笑ってラクスにハンカチを差し出す。


「それくらい強く想ってあげないと、泣き虫キラはすぐ駄目になっちゃうから。いつも傍にいて、めいっぱい愛してあげないと」

「…フレイ、さん…?」

「たったそれだけのことなのに、私には出来なかった。復讐が愛情に変わっていくのを認めるのが怖くて…逃げることしか出来なかった…」


──私を酷く優しい手つきで抱くあなたが、悲しかった

縋ることさえ罪で、気付いた時にはもう遅かった

私はあなたを“愛していた”──と。


「でも、あなたなら大丈夫ね。それを確かめたかっただけだから…もう行くわ。キラに邪魔してごめんねって伝えて」

「…ぇ、ぁ…あのっ…!」

「どのみちもうそろそろイザークとの約束の時間だから。私、今は彼と付き合ってるの。だから心配しないで。じゃあね!」


そう言い残して、去って行くフレイ。

ラクスは意を決して拳を握り締め──…





「……フレイさんっ!!」


フレイはその言葉に立ち止まって、振り返った。


「ご挨拶が遅れました…っ私はラクス・クラインですわ…!あなたは…っ?」


あの日、初めて出会った時と同じ言葉を投げ掛けた。

あの時は突き放されたけれど──…

ねぇ、きっと今なら。





「…フレイよ。フレイ・アルスター!また何処かで会いましょ!」


花のような笑顔でそう言ったあと、朱い少女は足早に走り去った。

それはきっと、溢れる涙を隠すため──…



「ありがとう、ございます……」


ラクスは小さく呟いて、フレイが去った後を見つめた。












───────



───……





「お待たせー!…って、あれ?フレイは?」


飲み物を抱えて戻って来たキラは、ベンチに座っているラクスに首を傾げた。


「イザークさんとの約束の時間だから行く、と…。今は彼とお付き合いなさってるそうですわ」

「あぁ!そういえばイザークがそう言ってたっけ」


キラは思い出したように頷いて、ラクスの隣に座った。








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