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P4
名前?



珍しく(失礼)神妙な顔をする陽介を前に、湊は改まって何の話があるのかと怪訝な表情を浮かべていた


「…相棒」

「ん?」

「どうしても気になるんで聞いてみようと思うんだけどさ」


聞いてみようとしている割には歯切れが悪い
促すと、意を決したように陽介は口を開いた


「お前さ、なんで足立さんのこと名前で呼ぶの?」

「……えーと、それは、だなー」

「いくら堂島さんの部下って言ってもさ、なんか…ほら」


昔なじみやとても親しいならわかるけど、こっちに来てからの知り合いレベルに対してはなれなれしすぎるというか
そう陽介がもごもごと言い辛そうに続けるのを見て湊は考える

(ここで好きだからーとか恋人だから、とか言ったら陽介びっくりするだろうしなー)

むしろびっくりさせてもいいんじゃないかと言う悪戯心もあるが、それをやった場合漏れなく挙動不審になった陽介から足立にばれる
ばれてしこたま怒られる
それは嫌だ

(でも、『いつから僕が君の恋人になったの!?』とかってまくし立てる透さんは見てみたいかも…)

きっとかわいいんだろうなーと考えていたら思わず頬が緩んだ


「…相棒…怖ぇよ…」

「ああ、悪い。ちょっとキツネの毛並みを撫でてるのを想像してた」

「お前ほんっとキツネ撫でるの好きだな!」

「陽介も一度撫でてみるといい。ヤミツキになる」

「いや、遠慮しとく…」


つーか話ずらすなよ、と陽介に睨まれて仕方なしに無難な答えを模索する
陽介が納得し、変に勘繰らず足立にばれたとしても怒られない返答


「えーと、だな」


続けようとするが、もう足立が大好きすぎるからという答え以外に浮かばない
困り果てていると意外なところから助け舟が入った


「あれ、なにしてんの君たち」

「透さん!」

「またサボりですか足立さん」

「しっつれーな。ちゃんとお仕事してます。ちょっと休憩しにきただけ。そしたら君らの姿が見えたから」


せっかくだから飲み物おごったげるよーと言いながら湊たちと同じテーブルに腰を下ろす


「で?なんか湊くん困ってたみたいだけどどんな無理難題つきつけられてんの」


休憩しに来たというより、湊が困っている様子をからかいに来たようだ
足立はすぐにやってきた店員に注文すると、意地の悪い笑みを浮かべながら湊を覗き込む


「えーと、これ本人前に言っちゃっていいのかなー…」

「え、なに。もしかして僕悪口言われてたりとかしたの!?」

「ち、違いますって!ちょっと気になってることがっていうか…」

「てことは僕絡みなんだ。…変なこと答えてないだろうね?」


後半は湊に耳打ちするようにして陽介には聞こえないように足立は言う
湊はにっこり笑って、まだ言ってませんとだけ返した


「まだってこれから言う気?…はぁ。で、花村君の気になってることって?」

「え、えーと、あいぼ…日向が、なんで足立さんのこと下の名前で呼ぶのかがほんのちょっとだけ気になるっていうか…」


ほら、普通知り合いレベルの年上の人を下の名前で呼んだりとかあんまりしないじゃないですか!と続ける陽介に足立は小さくため息を吐いた
これは放置しなくて正解だった
放置しておいたら湊がどんな答えを返したかわかったものじゃない


「ええと、花村君」

「はい」

「君が気になってるのは、『知り合いレベル』の相手が名前で呼ばれてるってことなんだよね?」

「ええ、まあ」

「じゃあ答えは簡単だよ。君らほどじゃないにしろ、僕と湊くんはそれなりに仲がいいから。一緒に出かけることもあるし。ほら問題ないでしょ」

「あ、友達ってこと、ですか」

「友達っていうのもなんだけどねー」


飄々と笑ってみせる足立に、納得したような表情を浮かべる陽介
二人を見比べてから湊は感心したように呟いた


「……透さんが、賢い…」

「ちょっと君!?」

「いや、なんか意外でした…」

「前から言ってるけど僕は頭脳派なんだよ?うまく説明くらいできるっての」

「ずっと自称なんだと…」

「どういう意味!」

「そのままの意味です」

「よしわかった。その喧嘩、買うよ?」

「ゴメンナサイ」

「ごめんですんだら僕らは要らないの!」


突如始まった二人のやり取りに、陽介は目を丸くしてから思わず吹き出した
二人が同時に陽介を見る


「あ、す、スンマセ…ぷっ、いや、確かに仲いい…っあはは」

「ちょっと笑われたじゃない君のせいだよ!?」

「透さんが賢いのが悪いんですよ」

「賢いのが悪いってどういう意味!君が困ってたみたいだから助けてあげたのに!」

「最初の目的は絶対俺が困ってるのを楽しみに、でしょう?」

「うっ。い、いいでしょー。君の困り顔なんて滅多に見られないんだし!!この鉄面皮!」


喧々と続く二人の言い合いに、少しだけうらやましく思わないこともない陽介だった

(…いや、うらやましくないか。なんか子供の喧嘩みたいだし…)



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どこだここ(笑)
とりあえずフードコートじゃないのは確か



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あきゅろす。
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