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P4
キャベツも愛して



じっと足立の手元を見つめ無言の圧力
所在無さげに提げたビニール袋を背中側に隠してみるが、すぐにその手を取られた


「…透さん」

「なにかな?」

「なんでまたキャベツ買ってるんですか。うちにまだ3玉ありましたよね?」

「…だって安かったんだよ…」


買ってからまだ家に残っていたのを思い出したのだ
仕方ないじゃないか


「安くても腐らせたらもったいないでしょう?透さんがキャベツ好きなのは知ってますけど…」

「腐る前に食べたらいいんでしょ!?食べるからそんな言わなくてもいいじゃない」

「どうやって?」

「…えーと、千切りにして、塩茹でして、浅漬け作る?」

「…はあ。結局料理するの俺なんですから」

「頼んでないし!ちゃんと自分でなんとかするから口出さないでよね」


拗ねたように顔を背ける足立の頭を湊は撫でる


「せめて常時2個までにしてください。それなら何とか傷む前に使い切りますから」

「だから頼んでないって…」

「放っておいて透さんが体壊したりするの、嫌です」

「だから毎日ご飯作りに来るんだ君…」

「本当は出来立ての温かいのを用意してあげたいんですけど、時間も合わないですし」

「…あの、さあ」


ため息混じりにキャベツの入ったビニール袋で湊の足を叩く
少しだけ顔をしかめるが、足立の言葉を待つように湊は首を傾げた


「君、なんでそこまで僕にかまうの」

「?」

「甲斐甲斐しくご飯作ってくれたり、休みには掃除とか洗濯とかまでしてくれるよね」

「透さんが好きだからですよ?」


何回目だろうこの会話も
なんで?と問えば好きだからと返ってくる
足立は、わかりきったことを何故聞くんだろうと言う表情を浮かべる湊に問いかけを重ねる


「じゃあ僕なんかのどこが好きだって言うの。全部とか陳腐な答えは却下だからね」

「……最初に好きになったのは声で、それから背中と、整えられた指先、とかですかね」

「出所は?」

「再放送で見たアニメの歌です」

「却下」

「そう言われても、いちいち羅列しても結果的に全部になっちゃうんですけど」

「……じゃあ、その中で10個」


全部とか言っても10個も挙げたらネタ切れになるだろう
そう踏んで足立は意地悪く追求する


「10個でいいんですか?」

「え?」

「ええと、そのすぐに僕【なんか】っていうところ。怒られると逆ギレするところ。素直じゃないところ。実は結構腹黒いところ。猫背。詰めが甘いところ。キャベツ。器用貧乏なところ。それから後はまあ定番で…顔、声ですね。はい10個」

「……っ」


さらりと10個羅列する湊に絶句する足立
なんでそんなにすぐ挙げられるんだ
一瞬恐怖に似た感情を覚えながらも、ふと気付く


「…湊くん」

「はい」

「何個目かにキャベツって言われた気がするんだけど」

「言いました」

「好きなところがキャベツって意味がわからないよ!?」

「だって透さんキャベツ好きじゃないですか」

「キャベツが僕の一部だって言うの」

「もはや一部レベルだと思ってるのでキャベツも愛してます」


それはちょっといくらなんでも気持ち悪い
足立が顔をゆがめると、取り繕うように湊は言い直した


「あ、いや。ええと、キャベツが大好物な透さんがかわいくて好きってことです」

「今、キャベツも愛してるって言ったよ…」

「言葉のあやです」

「どっちにしても気持ち悪い」

「挙げろっていうから挙げたのに……」

「そこでキャベツも愛してますとか聞かされるとは思わないでしょ」

「透さんが冷蔵庫にキャベツ大量にストックするからいけないんですよ。なんか透さん=キャベツ、が刷り込まれちゃったんです」


どんな言いがかりだ
もう一度キャベツ入りの袋で湊の足を叩くと、足立はその袋を港の手に押し付けた


「もうわかったから。…今日はロールキャベツ作って」

「ちょ、どういう風に理解されたのかが気になります!よもや透さんよりキャベツが好きって結論でわかられてないですよね!?」

「今の会話をどう曲解してもそういう結論にはならない!」

「…よかった」

「とにかく、ロールキャベツ。今日はトマトのはやだ」

「じゃあクリームソースので」

「そうして」


先に歩き出した足立の後を追って後に続く湊
鍋いっぱいにロールキャベツを作ってあげよう
生クリームあったかな
そんなことを考えながら笑みを浮かべた

(透さん、かわいい)



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どこでこんないちゃついてたんでしょう
ジュネス?
陽介に目撃されてあとで微妙な顔されたらいいよ



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