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TOV
一夜明けて


夜のうちに少し雪が降ったらしい。ゾフェルに近いわけでもないこの辺りでは珍しいことだ
フレンが朝の鍛錬を済ませ、部屋で顔を洗っていると、ノックと同時に人影が飛び込んできた


「おはようございますっ」

「おはようございますエステリーゼ様」

「ど、どうだったのでしょう?」

「いきなりなんだよ」

「決まってます!レイヴンはちゃんとサンタをやれたんです?」

「知るかよ。まだどっちも起きてねぇみてえだし」


起きているならば、いつものごとくじゃれ合いの声が聞こえてくるはずだが、今朝はまだ静かなものだ


「ま、まさか…レイヴンは返り討ちに…」

「そうなっていたらロアがもっと早くに飛び込んできますよ」

「相討ちだったりしてな」


欠伸をかみ殺しながらユーリがそう冗談混じりにつぶやくと、隣の部屋の扉が開く音が聞こえてきた
慌てる様子もない足音
どちらのものかはわからないが、エステルとフレンは揃って廊下への扉を細く開く
見えた背中はロア


「……とりあえず、クリスマスの大惨事にはならなかったようですね…」

「ロアはちゃんとプレゼントをもらえたんでしょうか」

ひそひそと囁きあっていると、それを聞きつけたのかくるりとロアが振り返った


「あっ」

『フレン…に、エステル?』

「お、おはようロア」


とてとてと近付いてくるロアにそんな挨拶を返しながら、フレンは扉を大きく開く
今更閉めたところで無意味だろう


『ん。はよ』

「あの…レイヴン、は…」

『? まだ、寝てる』


部屋を振り返りながらそう答えると、二人は大きく安堵の息を吐いた


「……ロアのところに、サンタは…来たのかい?」


また怯えだすかと心配しつつそう問いかければ、思いのほか何ともない様子でロアは頷いた


『……ん。こわくない、サンタが、くれた』

「え」

『かわいい』


ロアが自慢げに二人に取り出して見せたのは、手のひらサイズのオタオタのぬいぐるみ


「……なんで魔物?」

『かわいい』

「ん?なんだ結局サンタ返り討ちにしなかったのか」

『こわくないサンタは、返り討ちしなくても、だいじょぶ』

「そうかよ。あ、ついでにおっさんも起こしとけよロア」

『わかった』


ぎゅうとぬいぐるみをポケットに押し込みながらロアが頷く
そのままさっき出てきた扉へ戻っていく後ろ姿を見送り、エステルはぼんやりと呟いた


「……あのぬいぐるみ、レイヴンが作ったんでしょうか…」

「考えさせんな、エステル」





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おっさんが出てこなかった…
とりあえずオチ
おっさんが夜なべしてぬいぐるみとか縫ってたらかわいいと思う

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あきゅろす。
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