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TOV
クリスマスイヴ



「……うーん」


クリスマスパーティーの後片付けをしながら、レイヴンは今日何度目かわからないうなり声を上げた
サンタを心底恐れるロアに、なんとかしてサンタは怖くないのだと理解させようとしてきたが、結果として今日この時間まで成果は出ていない
エステルが童話を読み聞かせれば、裏で悪い子を粛清しているのだと怯え
フレンが昔プレゼントをもらったと思い出話を語れば、それは本物じゃないのだと疑ってかかる


「そもそもなんで本物のサンタは悪い子を斬りつけるなんて信じたのかね」

『……襲われたこと、あるから…』

「ぅわ!?びっくりした。いたのおにーさん」

『洗うお皿、追加』

「ああ、ありがとね」


ロアの差し出した皿を受け取り流しに置くと、レイヴンは先ほどの聞き流せない単語に問い返した


「つーか、おにーさん…サンタに襲われたって…」

『……赤い服に、銀の髪……ひげ……サンタ』

「サンタはおじいさんなんだから白髪じゃないの」

『白髪……かもしれないけど…』

「襲われたにしちゃ、おにーさん今生きてんじゃない」

『抵抗、したから。本気で…殺されるかと思って…』


そんな事実があったなどとは知らなかった
それならばいくらサンタは優しいだの怖くないだの諭したところで、実体験は言葉に勝る


『……抵抗、してたら…ひげ…もげた…』

「それで?」

『………よく、覚えてない。とにかく、怖かった…』


青い顔をするロアの頭を撫でようとして、手が洗剤だらけなのに気付いて引っ込める


「……おにーさん、ちょっとしゃがんで」

『?』


言われたままに腰を折ったロアの額にレイヴンは軽く頬を寄せた


『レイヴン?』

「そんな怖い目にあってたのは知らなかったわ。ごめんね」

『レイヴンは、悪くない』

「もう、そんな怖いサンタは絶対来ないから。優しいサンタなら来てもいいかしら?」

『………』


無言を肯定と受け止め、レイヴンはそのままロアの髪に軽く口付ける


「怖いサンタが来たら、俺様が退治したげるから」

『………うん』







そんな二人を厨房の入口から冷めた目と感動の目で見守る人影が三つ


「……シュヴァーン隊長…っ」

「レイヴンはロアのことをとても大事にしているんですね」

「…今の、感動するとこあったか…?」



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最後はなぜかいちゃつき始めました
流血のクリスマスにはならなさそうです

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