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TOV



少し傾いた陽が入る部屋で、レイヴンは寝台に腰掛けてサイドテーブルを引き寄せ弓の整備をしていた
仲間たちは買出しや散策などで皆出払っている

ただ一人、レイヴンの膝に頭を乗せてぼんやりと作業を眺めているロアを除いて

最初はサイドテーブルの傍にあった椅子に座って作業をしていたのだが、ロアがレイヴンの周りを所在なさげにうろうろとするのが(正直)鬱陶しくて寝台に移動したのだ
そうしたらロアは嬉しそうにレイヴンの膝に頭を乗せて寝台に横になって、今に至る


『レイヴン』

「なーに」

『これ、落ちてきた』

「あら、ありがとね」


ロアが差し出した小さな部品を受け取ってテーブルの上に戻す
また沈黙が部屋に落ちた
レイヴンが弓を整備する音だけが響いている


「…ねえ、おにーさん楽しいの?」

『楽しい』

「ふぅん」


ちょっかいを出してくるでもなく、枕を抱えた体勢で頭だけをレイヴンの手元に向けて作業の進捗をじっと見つめている
たまに落とした部品を拾ってくれるので、レイヴンとしては大助かりなのだが、反面膝が重い


「ねえおにーさん」

『んー』

「はっきり言われるのとソフトに言われるのとどっちがいい?」

『どっちも聞く』

「…あ、そう。じゃあ先にソフトに言うわね。足しびれてきたんだけど」

『我慢して』

「はっきりも言うからね。邪魔。重い」

『…反対側行く』

「いや、そしたらそっちが今度はしびれるだけだし!」

『レイヴン、わがまま』

「俺様の作業の邪魔してるのおにーさんでしょ?」


手助けになっている部分もあるが、そこはあえて教えない
ロアがのそりと身を起こしてレイヴンの顔を覗き込んできた


「…何」

『背中、くっついてもいい?』

「…邪魔しないならいーわよ」


もぞもぞと場所を移動し、背中に顔を押し付ける
背中に体重がかかるが、膝に乗られているよりは作業がしやすい


『レイヴン』

「今度は何」

『なんかしゃべって』

「何かって、なに話せばいいの」

『なんでもいい。レイヴンの声、聞いてたい』


ひっついてると、声が響いて気持ちいいから
そう続けてぎゅうとしがみついてきた
この体勢でロアが話すと、反対にレイヴンの身体にも声が響く
耳からだけではなく身体で聴く声


「なんでもってもねー…そういえば、青年たちいつ戻ってくるのかね」

『夜には帰るって言ってた』

「じゃあそろそろかしらね」

『んー。そう、かも?』

「あれ、一個部品たんない」

『探す?』

「あ、だいじょぶそう。ベッドに落ちてたわ」

『よかった』

「そういえば今日はおっさんが料理当番だったわね」

『お刺身食べたい』

「でも材料がねー。青年買ってきてくれるかしら」


とりとめもない会話を交しながら最後の螺子を締める
弓を卓に置くと、レイヴンは軽く身をひねって背中に張り付くロアを振り返った


「終わったけど?」

『暗に、離れろと言われている…』

「…まあ、みんなが帰ってくるまではいーわよ」

『いちゃいちゃしても?』

「…いちゃ…」

『いい?』

「内容にもよる」

『ええと、ちゅー』

「却下」

『ぎゅー』

「……それくらいならいいけど」


言うが早いかロアが抱きついてきた
その背に片方だけ手を回してぽんぽんと叩く


「おにーさんはぎゅってするの好きねえ」

『違う』

「事あるごとにしたがるじゃない」

『レイヴンだから、ぎゅってしたい。レイヴンが好き』

「…ちょっと、恥ずかしいわね…」

『レイヴンは?』

「なにが」

『俺のこと、好き?』

「……どうかしらねー」


答える代わりに背中に回した手に少しだけ力を入れた
ロアのほうが大きいので傍目にはレイヴンが抱きついているようにも見える


『んー…いいや。俺はレイヴン、好き』

「いっつも聞いてるわねー」

『何度でも言う。好き』

「はいはい」


密着した身体を響いてくる声
ぬくもりとともに伝わってくる言葉
その温かさにレイヴンは知らず目を閉じていた



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最後二人とも寝てて、ユーリたちに見られるオチも考えましたがなんか長くなりそうだったのでここまで。
ぴっとりしたかっただけです



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あきゅろす。
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