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慕情的アイデンティティ(SC)





「セフィロスさんはどうして俺のことが好きなんですか」


「それはな、お前が紛れもなくお前でしかないからだよ」




慕情的アイデンティティ







午後2時47分。
午後のお茶の時間にはまだ若干の時間を残す、有り余ったひととき。

今日の訓練が思いのほか早く終わった俺の足は、世間では英雄なんて云われている人物(そうでなくとも彼は俺のヒーローなのだが)の司令室に向かっていた。


数日前に渡されたIDカードを通して入った部屋にその人はいた。



「クラウドか」


訊かなくたって貴方の特注の耳なら俺がこの階に足を踏み入れたことをとうに認識していただろうに、彼はそう言って極上の微笑を下さった。


「はい。お邪魔でしたか」


その笑顔は反則だよなぁ。

頭の隅の方でそうぼんやりと思った俺は自分の頬が熱くなったのが分かった。


「いや、邪魔ではない。ゆっくりしていけ」


くすくす笑いながらかけられた否定の言葉に俺の顔はますます火照った。



この部屋の主、英雄セフィロスは俺の憧れの人だ。
男として、兵士として、憧れる。


国の為に忠義を誓い、民のために闘う戦士。


本人はそんなものはレッテルだ、表向きの常套句だ、それにオレには神羅に仕える忠誠心は毛頭無い。

なんてバッサリ斬って捨てたし俺にだってそんなことは分かっている。

そんなもの子供しか信じない絵空事だってこと。



けれど彼は俺の英雄なのだ。



そんなの塗り固められてレースとかリボンとかで過剰に脚色されたものだったとしても。

子供の頃の憧れと、彼は国を救っているという紛れも無い事実があるのだから、憧れは消えないのだ。



「訓練は終わったのか?」

「はい」

「そうか」

「はい」


味気もなく色気もないやりとり。
けれどこの距離感が酷く心地良い。


元から二人共話す方ではないし、そういうのは専門外だ(いつもはエキスパートがいるし)





数日前、俺はこの人からある告白をされた。
打ち明けられた当初は何のことだか訳も分からず、ただただ驚愕し眩暈がしたのを覚えている。



英雄セフィロスはただの一兵卒である俺に慕情の念がある、と言ったのだ。



初めてセフィロスとまともに対面したのは数ヶ月前の事だ。
ザックスが俺が英雄に憧れて神羅に入ったなんて知った途端、俺とセフィロスさんを引き合わせたのだった。

事前に何も聞かされず対面した俺は軽くパニック状態で、それはもう情けなかった。(そのあとザックスを軽く殴った)


それから数ヶ月、やっとまだ目を見て話せないけど落ち着いて話が出来るようになった頃、セフィロスさんは俺のことを好きだと打ち明けたのだ。


何故俺なのだろう。
あれから俺はまだ答えを出していない。




『今でなくていい。考えておいてくれ』



あのときセフィロスさんはそう言ってくれた。

そして今もはっきりしない俺の回答を彼は待ってくれている。


どうしてこんなガキのことがいいんだろう。
二度(もしかしたら三度)同じような瞑想をしていたときだ。


丁度まばたきをして目を開いたそのとき、机に向かって資料に目を通していたセフィロスさんとまともに視線がかち合った。


何とも形容しがたい爬虫類のような、又は猫科の動物のような、其れは其れは綺麗な翠の双眸が細められた。


本当に、どうして


この人は別次元の、雲の上の人なのだ。
自分なんかとは決して違う。
それがどうして。



「セフィロスさん」

「どうした」


俺の口からは自然と疑問の言葉が出た。


「セフィロスさんはどうして俺のことが好きなんですか」



不思議なのだ。

これは夢なのか、質の悪い幻想なのか。

彼自身の口からこの曖昧な立ち位置を教えて欲しかったのだ。



俺の突然の質問に一瞬目を見開いた彼はそれから当然のように言ったのだ。


一瞬の歪みも無く。
一部の隙間も無く。
彼らしい完璧な形で。



「それはな、お前が紛れも無くお前でしか無いからだよ」






2009.03.20.脱稿

つまりは解答にはなっていないんですよ(笑)
かなり健全にしてみましたがどうでしょうね?
人間セフィロスなので基本良い人にしてみました(猫被りですけど)
感想は拍手の方からお願いします^^
評判良さげでしたら文も頑張ろうかなー、なんて(笑)

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