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ひとつの矛盾(SC)


他人が嫌い


人が嫌い






この子供は常時は歳不相応に沈着冷静でしっかりとしているのに、時に


酷く、酷く情緒不安定になる時があるのだ




「どうした?」





そして今まさに、件の子供は俺にしがみついた侭(否、抱きついてだろうか)一向に離れようとしない


ただでさえ意地を張って甘えもしない、
常に人との触れ合い、馴れ合いを躊躇うこの子供が、だ




「クラウド」



「………」




努めて優しく名前を呼んだつもりだったが一向に返事は聞こえない。


寧ろ掴まれてた服を更にひっしと堅くさせられてしまった


表情を窺おうとするが完全に顔を埋めてしまっている。



理由は判らないが、何かあった事は間違い無い



あやすように抱き締めてやって背中を叩いてやる


すると次第に頑なだった身体から力が抜けていくのが判った。




無理に話を訊こうとはせず、子供の次の言葉を待つ









「何も――何も、無いんです」



漸く口を開いた言葉は拍子抜けするものだった




「何も?」



「そう、何も」



依然子供の表情は窺い知れない




「何も無いんですよ。何も無くて、俺は独りで、毎日、何も無い」


何も無いのだ、と




とうとう顔を上げた子供には一切の表情が無かった



瞳は渇き、涙の一粒さえ無く



只でさえ白い肌は青白ささえ感じる




まるでビスクドールの人形の様だ


人の事は言えないが、あまりの人間らしさの欠落に、アルカイックとはこういう事をいうのかとどこか冷静に思った





「俺は部隊中じゃ独りぽっちで、毎日何も無くて、それでも良いと思っているんですけど、でも――」



何も無いんです






嗚呼、漸く子供の言わんとしている事が判った



「クラウド」


子供の瞳が微かに震えた






「俺も同じだ、お前と同じ、独りだ」





馴れ合いは嫌い、触れ合いは嫌い、


高潔で、それ故に可哀相な子供



けれども、独りでは生きていけない




俺たちは似た者同士


堕ちるときは二人諸共



手に手を取って










なんとも根暗ですね




2011.05.30

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