其ノ一 「よし、こんなもんか」 髪を重力に逆らわす間に火照りの引いた肌へ、洗濯したての白いコットンシャツを羽織る。 「あれ?この匂いって…」 最近ずっと天気が悪い。 『まだ暫くは、太陽は顔を出してくれないでしょう』って天気予報のお姉さんも言っていた。 まぁ、合宿所に缶詰にされてた俺には、雨が降ろうが槍が降ろうが関係ないが、そんな俺でもやっぱり恋しくなる。 普段はあって当たり前のものがない。その大切さをまざまざと思い知らされた。 「全く、どこまで恥ずかしがり屋なんだか」 苦笑し、しとしと、と雨音を聞きながら部屋に戻る。ベッドに腰掛け、丸まったままのタオルケットを抱きしめる。 「そろそろ出てきてくれないか…?」 姿を現しそうな気配はない。 「しょーがないなぁ」 潜り込んだ柔らかなタオルケットの中、太陽を抱きしめる。 香る匂い。 あぁ、そうか。 ひなたの匂いだ。 『柔軟剤 ナナロク(ひなたの香り)』 |