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知ってたけど今気付いたこと
食辛(擬餡)



暇つぶしに食の配達について行った俺がバカだったんだな、うん。

俺が初めて行く街。
食はよく来ているから街では人気者らしい。それは本人の思い込みではなく、俺たちが乗ったトラックが広場に着いた瞬間近くで遊んでいた子供たちが走り寄って来たから間違いない。

....つーか、自分で人気者って言う時点でどうよ。

飽きれている俺の手をさりげなく引きながら子供たちの元へと歩いていく食。
俺が拒めないことまで計算しているだろうこいつの思い通りになるもんか!と思い、食が立ち止まると俺は手を離して少し距離を置いた。

普段なら結構子供にはモテる俺だが、ムスッとした顔をしているからか、子供達は遠巻きに俺の姿を見てひそひそしている。

その姿に気付いた食は俺のことを紹介してくれた。

「彼はカレーパンマンです。私の1番大切な人なので害はないですよ」

そういうと警戒がとけたのか、子供達は俺の元へと寄って来た。
大好きなしょくぱんまんに営業スマイルたっぷりで言われたらそりゃあ信じるしかねーよなあ。

俺はと言えば、子供たちに何教えてんだよ!とか、ダジャレつまんねーよ!とかが頭をグルグルしてて、いろんな意味で恥ずかしくなってしまっていた。

結局よくわからない罪悪感を抱いていた為か、俺は終始ぎこちないまま街を出ることになった。



「お前さ、さっきのなんなわけ?」

「本当のことを言っただけです。嫌でした?」

「そ、そこじゃなくて!あのダジャレ超つまんねーし、お前センスなさすぎ」

あえて触れていなかったところをつっこまれてつい、どもってしまう。

「じゃあこれはどうですか?」

食が営業スマイルではなく、俺にしか見せない笑顔で嬉しそうに聞いてきた。

「....つまんなそーだけど聞いてやるよ」

結局、その笑顔の違いが分かってしまうし、それが嬉しくなっちまうしで、俺は食に甘い。

「いきますよ〜!"カレーパンマンの作ったカレーは辛れーです!"どうですか?」

「...お前のセンスどうなってるの?つか当たり前の事言うなよ。んで、俺様のカレーをけなすな」

予想以上にセンスのないものに俺の思考は停止してしまう。
だが、まだマシだったのだ。
だって....

「ダジャレとか言わないと格好良さが一人歩きしちゃうんですよね〜」

...ああ、救いようがないバカだ。
ここまで自信満々に言われると自分が間違えてるんじゃないかって思うぜ...

つか、ニコニコして当たり前の様に言い切ったコイツにムカつきを覚えつつ嫌いになれない時点で、俺も大概バカか....ハァ....


甘口カレーを食べた時以上に悲しくなる事ってあんだな。ってことを確実に勉強した俺だった。


あきゅろす。
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