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egoist
わんわんにゃん!
ヒロさん大して出てきません。
野分とつもりんとオリキャラの女性でのお話。



「そういや昨日って11/1でわんわんわんの日だったらしいぜ」

病院の食堂でラーメンの汁をすすりながら目の前の後輩に話しかける。
高カロリーですよと呆れた顔をした野分はこれみよがしに体に良さそうなお茶を一口飲むと口を開いた。

「そういえばヒロさんにも言われました」

どういう意味だったんでしょうかと本気で不思議がる野分を見て思わず吹き出す。
そりゃお前、目の前にでっかい黒わんこがいたら言いたくもなるだろうよ。
それともなんだ、上條さんはそれを野分に伝えて「わん!」とでも言って欲しかったのか?
こいつ上條さんの前だとマジで犬耳とぶんぶん振る尻尾見えそうだもんな。
んで、従順ぶった大型犬に押し倒されてわんこプレイしたいとかそんなところか?
お手とかおかわりとか、伏せ…はどっちかというと上條さんの役目か。

「あーやだやだ。これだからバカップルは」

「え、バカップル?なになに、草間先生の彼女さんの話ですかー?」

突然のバカップル発言にハテナを浮かべる野分と勝手な妄想でウンザリしてた俺の元にやってきたのは、同じ小児科で働く看護師。
ったく女ってのは恋愛話になると恐ろしい程の地獄耳を持ってるんだよねー。

「そー。わんこ野分のネコ可愛い恋人ちゃんのおはなしー」

「ネコ可愛いってなんですか、ヒロさんはネコの括りを越えても可愛いです」

「草間先生も言ってる意味がよくわかりませんが…」

俺たちの会話に割り込んだ事を若干後悔してる看護師に心の中で謝ってから続ける。

「で、俺思っちゃったのよ。この語呂合わせでいけば今日は11/2でわんわんにゃんの日じゃね?」

ちょっとくだらねーかなと2人の様子を伺うと野分はため息をついて茶をすすっている。
自覚はあったけどそこまであからさまな顔することもねーだろお前。仮にも俺は先輩だぞ野分くん。
しかし彼女はちょっと違った反応を見せていた。

「でもそれってつまりわんこの片一方側攻めってことになりますよね」

「あの…?」

「いや、表記法がこう一方的すぎるというか…」

もちろん一方通行もおいしいんですけど。
でもせっかく同じわんこが2人いるんですから同じ方向から攻めるのはもったいないと思うんです。
お互いが持つラブの種類が一緒だから相殺されちゃうじゃないですか。
だから個人的には11/2に関しては感情が高ぶらないというか…。
なので、どうせならわんをもう1人増やして11/21にすればわんわんにゃんわんでにゃんこが挟まれて逃げ場をなくすのがベストかなと。
でも1番バランスが取れてるのは1/21なんですよね。
あ、12/1はにゃんとわんの間に余計なゼロが入る可能性があるので第2候補です。
1/21の場合は最初のわんの前にゼロがくるので傍観者役にも出来ますし。
いっそのことわんの事を攻めてもいいですしね、それはお好みでどうぞ。
あ、それだと11/2もゼロが入ってくるのか…まあいいかそこまで考えてたらキリないし。
やーんどうしよう、考えてみるとそれぞれいいかもー!

嬉しそうに笑って自分の世界に入り込んでいる彼女にどう接していいか分からない。
俺は女性経験が豊富な方だが…こんなタイプは初めて見た。
こんなの俺の知ってる女性じゃない。

当初の話と180度以上噛み合ってないこの会話にどう終止符を打てばいいのかと頭を抱えていると野分が閃いたように口を開いた。

「例えば小型犬風の俺と大型犬風の俺が一方から攻めるのはアリでしょうか?」

こいつは何を言ってやがる!
小型犬風とか大型犬風ってお前はそうやって犬の種類を使い分けて上條さんに接してんのか?!

「…それは盲点でした。草間先生なかなかやるじゃないですか。才能ありますよ!」

…は?

「小型犬特有の警戒心ある距離感を保ってベラベラお喋りしていていると急に、寡黙だけど愛情表現が豊かな大型犬も登場とか!」

「あとは壁に追い詰めちゃえばいいと思うんです。ドンって」

「そんなことされたら彼氏…じゃなかった彼女さんもなす術なく無事ホールドオンね!」

あんた途中でなんか言いかけたけど間違ってねーよってか、なんかもうどうでもいいわ。

「俺先行ってるわー」

まだ休憩残ってますよ?と言う2人に背を向けてひらひらと手を振る。
俺から吹っかけた話題だけど、あの噛み合ってんだか合ってないんだか分からない空間にはこれ以上いられそうにない。
今の時期、屋上の喫煙所は寒いけどあそこっきゃ行く場所ねーよな。
未だヒートアップする2人の会話を背に、屋上へと向かうべく緩めていたパーカーの首元をしっかりと締めた。





*おまけ*

「ただいまです」

「おかえり」

「ヒロさん、わんわんにゃんです!」

「…は?」

「まだ今月はわんわんにゃんわんもありますし、その時はにゃんこのヒロさんが攻めてもいいみたいですよ!」

「…へ?」

「でもあくまで精神的攻めは俺らしいです。3人分の俺の相手お願いしますね!」

「…あ?」

「とりあえず今日はいつもの2倍の俺の愛情感じてください。まずは小型犬の俺からです」


「え?って、ちょっ…のわ…っ」




「ということでちょっと強弱がある愛情表現の方がヒロさんはいいみたいです」

「…それ俺じゃなくて彼女に話してやれよ」

「どうして彼女に俺たちの性生活を話さなければいけないんですか」

「この間盛り上がってたじゃねーか。てか俺だって聞きたいわけじゃねーし」

「先輩には話しておけば牽制になるかと思って。ヒロさんは俺にだけ夢中なんですよって」

「…お前ってオブラートに包むって言葉知らないだろ」

まあ俺にしか言えない相談だろうだから聞いてあげるけどね、可愛い後輩くん。




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