パラレル
JOKER Love
…………
視線が痛い。
もう一度言おう。
視線が、痛いです。
「り、リボーン先、輩……?」
「ん?なんだツナ」
俺は隣をすたすたと綺麗に歩く一学年上の先輩を見上げた。
朝の爽やかな陽射しは彼の美貌(言っておくが、男)をより眩しくさせる。黒髪は艶やかに輝き、黒い瞳は朝にも関わらず生き生きとしている。
一方のツナは、いつもと同じように寝起きそのものな顔をしている自覚があった。リボーンが家に迎えに来て一緒に登校するぞ、なんて言わなければ、この時間はまだ夢の中な筈なのだから。
「……あの、みんな、見てません?」
俺達の事、とツナは俯きながらボソリと付け足した。下を向くのはツナの恥ずかしがる時の癖で、今のツナの恥ずかしさとリボーンが思う恥じらいは少し違う。だが、リボーンは恋は盲目とはよく言ったもので、都合よく解釈したらしい。
繋いだ指が一層強く絡まり、ツナは悲鳴を上げそうになった。
「ツナ……周りの事は気にすんな。……誰が何と言おうと、今日から俺達は恋人同士なんだからな」
頼むから誰か何とか言ってくれ!!と言うツナの懇願は、残念ながら叶わなかった。
さかのぼる事、16時間前。
いろいろと省いて結果だけ述べてしまえば、皆の憧れリボーン先輩とダメツナが彼氏彼女(とは考えたくないが)な関係になってしまったのだ。
だがツナは、リボーンが好きな訳ではない。はっきり言えば、苦手だ。
リボーンは生徒会長に就いているのだが、何かとツナに厳しいのだ。廊下ですれ違うだけで、服装が悪いだのネクタイが曲がっているだのとツナばかりに集中した注意をするのだ。
あからさまに目をつけられている。ツナだけではなく全校生徒が気付いている事だった。
ツナが一年生、リボーンが役職に就いていなかった二年生の時からずっとこんな感じだった。リボーンが就任時に、生徒会にツナを書記として推薦しようとした動きがあったと聞いた時は戦慄した。なんだそれ、生徒会でパシリをさせる気だったのか。
(なんとか阻止されたらしいが、その時以来、運動部長のコロネロ先輩が哀れみの目で見てくる)
そして生徒会室に放課後呼び出された昨日、窓から夕日を見ながらリボーンはツナにこう言ったのだ。
「結婚してくれ」
「…………はい?」
何をいちゃもん付けられるのか緊張していたツナは、たっぷり四秒固まってから聞き返した。(リボーンは未だ振り返らない。)
「あの、もう一度お願いします……」
「結婚しよう、綱吉」
人間パニックになると、よく解らない事を考えるらしい。この時ツナが思ったのは「俺の名前、綱吉だって知ってたんだ……」だった。ダメツナと言われすぎていて、リボーンの口から出る自分の名前に違和感を覚えてしまった。
「……いやいやいや!!なんで結婚!??マジでなんの話ですか!!バツゲーム?!」
「……そうだな。俺は恋と言う名のゲームに堕ちたようなものだ」
「俺の質問を変なナルシスト言葉に使うな!!」
と言うような会話が二人しかいない生徒会室で一時間程繰り広げられ、最後には互いに健闘を讃え握手をかわし合ったのだ。(この時点で当初の問題からズレていた)
そしてリボーン先輩が朝のお迎えに来た。
こういった流れでこの恋人繋ぎでリボーン先輩と仲良く登校というバットエンド(いや、悪夢は始まったばかりなんだけど)になってしまった。
なんだ、この羞恥プレイ。
隣でリボーン先輩は鼻歌歌ってるし。
結婚って多分、リボーン先輩にとって主従関係なんだよ。うん、きっとそう。そう思った方が俺は幸せになれる。
繋いだ手だって、逃げないようにとかそういう意味なんだと思う。
ツナが無理矢理そう自分に言い聞かせていると、リボーンがいきなり立ち止まった。
「そういえば」
「へ?」
「お前、俺に先輩付けなくていいぞ。リボーンって呼び捨てで構わねぇ」
「ぃ、いや!?先輩は先輩だし……」
ツナは顔を青くして首を降るがリボーンは譲らない。
「……俺達、付き合う事になったんだろ?」
なんの話だ!!
そして、いつ決まったんだよ!!
俺がいないところで俺の運命を左右するような問題を誰かが起こしてるのかよ!!
「り、リボーン……?」
「っ……ツナ!!」
「リボーン!!」
「ツナ!!」
一方は涙目になりながら。もう一方は嬉しそうにほほ笑みながら。互いの名前を呼び合う(はたから見れば)バカップルが並盛高校校門前で多数の生徒に目撃された。
JOKERLove
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あのですね、ごめんなさい(泣)
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