サムライヒーロー!
「ヒーローは遅れて登場するモンだコノヤロー」
malevolo!
12〜messia!〜
「っ、ゲホッ、」
万事屋を飛び出して、わけもなく走った。行く宛もないのに走った。
【ズキンッ】
身体の傷が傷んでも走った。
何処か、遠くに行きたかった。
…いや、違う。
俺は、“逃げた”んだ…
今自分の身に起きてる事から、目を反らした。
自分の都合のいいように考えて、“恐怖”を紛らわそうとした。
孤独から、逃げた。ただ、それだけ。
【ベチャッ!】
「っい、てェ…」
転んで、また1つ怪我が増えた。
もう、足は動かなかった。
何でだろうな。人間って、独りになるほど消極的になるんだ。
俺自身、典型的なソレ。独りになると、昔の自分を思い出す。
(…んで、涙なんか出てんだよ)
俺の意思とは裏腹に目から流れる液体。
拭っても溢れ続けるそれに、嫌気がさす。
(…俺、全然成長してねぇや…)
嗚呼、何て脆い。
口から自嘲気な笑みが溢れた。
「何だぁ?このガキ」
「こいつ、さっきのガキじゃねぇか」
途端、上から降ってきた声。
見上げるとそこには、先ほど殺り合った攘夷志士達の姿があった。
(そういやここ、さっきの公園の近く、)
馬鹿か俺、わざわざ奴等のテリトリーに向かうなんて。
俺はそんなに走る事に必死だったのか…
「さっきは変な白髪に邪魔されたからなぁ…」
なんて言いながら、そいつらは倒れている俺の頭を小突く。
――もう、どうなったっていいや。
「殺るなら、やれば」
「あ?」
「殺したけりゃ殺せって言ってんだよ…」
一刻も早く、この世界から消えてしまいたい…
「ははは!たまげたガキだなァ」
刀を抜く音が聴こえる。
俺はいつの間にか、目を閉じていた。
「―――、」
目を閉じてから1秒、また1秒と時間が過ぎていく。
けど、何秒経っても刀が降り下ろされる気配はない。
その代わり、不意に聴こえた鈍い金属音。
「…な、んで」
「よう、大丈夫かー?」
目を開けるとそこには、木刀で刀を受け止める銀色の姿があった。
「っ何で此処にいんだよ!!」
俺は堪らず叫ぶ。
銀さんにとって、俺は無意味な存在なのに。俺が勝手に出て行ったのに。
「あんな顔みりゃ、」
銀さんは後ろを向いたまま話し出す。
「んな泣き顔みりゃ、あれが嘘じゃねぇって事くらい分かるわ」
痛みが、吹っ飛んだ気がした。
「悪かったな」
相変わらず銀さんは後ろを向いたまま。俺からは銀さんの顔を見る事ができない。
けど銀さんの声色が、妙に俺を安心させた。
「テメェェ!さっきから邪魔ばっかりしやがって!!」
「あ?今話し中だろ。人が話してる時は黙って待ってろって習わなかったのかコノヤロー」
銀さんは悪態をつきながら、敵をどんどん倒していく。
「っ、テメェ等引くぞ!!」
敵はとうとう諦めたのか、俺達の前から居なくなった。
俺と銀さんだけが、その静まりかえった場所に残っている。
「銀、さ「けーるぞ」
お礼を言おうと思った束の間、銀さんに言葉を遮られた。
「早く帰んねぇと、夕飯全部神楽に食われっからな」
そう言って、銀さんは俺を見据えて微笑んだ。
あの紅い目は、もう怖くなかった。
「…っ、ありがと、う…」
侍ヒーロー
「とりあえず涙拭け!色男が台無しだぞ」
「涙じゃねぇ、心の汗だ!」
(俺の心を救ったのは、銀色の侍だった)
messia(メッスィーア):イタリア語
意:救世主、メシア
とりあえず一区切りついたような…
次からはギャグ入れていきたいです
081012
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