└A
「え、と…つまり、葉月さんは異世界人で、葉月さんのいる世界に僕らとそっくりな人間がいる…と」
自分の身の回りで起きた事。俺がいた世界の事。
俺はそれらを全て話した。
「そ。まぁ、そっくりっつーかそのまんまなんだけどな」
「私がもう1人いるアルか!?可愛いアルか!?」
「うん、だからお前とまんまっつってんだけどね。まぁ妹みたいで可愛いって俺は思うけど」
「何気に気持ち悪い事言ってんじゃねーヨ」
「あれぇ!?今辛辣な言葉が聴こえたよ!今絶対聴こえた!」
なんてこった。
顔もそっくりだけどどうやら中身もそっくりらしい。
「…でもまさか、そんな世界があったなんて…パラレルワールドっていうんですかね、これ」
パラレルワールド。
同じ時に違う世界が存在する、か…。
俺だって、そんな世界があるなんて思ってもなかったよ。
「それじゃあ、葉月さん…これからどうするんですか?」
「、え…」
何も考えてなかった。
金もなければ、ましてや今日寝るところだってない。
今の俺には、何もする術がないんだ。
「なら、此処にいればいいアル!」
「へ?」
俺が沈んでいると、神楽が大声を出した。
「そうですね。葉月さん、何処にも行く宛先ないんですから」
新八も神楽の考えに同意する。
「でも、」
確かに俺にとってはありがたい話だ。
けど、いくら俺が知ってる奴らとはいえ、向こうにとってはただの見ず知らずの他人なんだ。
なのに、何でこんなに優しくしてくれるんだ。
「ここで会ったのも何かの縁ネ。銀ちゃん、いいアルか?」
「銀さん?どうしたんですか?」
神楽と新八がさっきから黙っている銀さんに話しかける。
銀さんの目はいまだに真剣で、銀八の普段のそれとはかけ離れている。
俺が此処に来てからずっと心の中にある疑問。
“俺の名前は銀時!エイトじゃなくてタイムだコノヤロー”
新八も神楽も名前はそのままなのに、銀さんだけは違う。
(だからなんて呼んでいいか分かんねぇ)(とりあえず新八と同じように呼んでるけど)
その事が、ずっと引っかかっていた。
もしかしたら、銀さんだけは…銀八と違うんじゃないかって、思ってしまうんだ。
新八も神楽も俺を受け入れつつあるのに、銀さんだけ…目が違うんだ。
「…なかなか面白ぇ話じゃねぇか」
ずっと黙っていた銀さんが口を開いた。
「んな話してっと、ろくな大人になれねぇぜ」
「、え…」
声に、ならなかった。
銀さんが何を言ってるのか、理解できなかった。
ひどく、身体が震えた。
「銀さん…っ!」
銀さんの言ってる事を察したのか、新八が口を挟んだ。
けど、銀さんはそのまま話続ける。
「どうせ家出かなんかだろ。悪い事は言わねぇ…早く家帰んな」
銀さんの紅い目が、俺を見据える。
俺はそれから目を反らす事ができなかった。
“家出なんかじゃない”って、“嘘なんかじゃない”って、言いたいのに、声が出ない。
身体の傷が、ひどく痛んだ。
「…っ、」
「葉月さんっ!?」
「葉月!」
重い空気と銀さんの冷たい目に耐えられなくて、気付けば俺は、外に飛び出していた。
此処に来て分かった事。
1つ。此処には俺の知ってる奴がいる事。
2つ。けどそいつらは、俺とずっと一緒にいた奴らじゃないって事。
3つ。此処は、俺が居ていい世界じゃない、事。
誰か僕に頭痛薬を下さい
その事実に、涙が出た
(嗚呼、俺は独りなんだ)
cefalea(チェファレーア):イタリア語
意:頭痛
坂田さんが悪者ですみません(…
080915
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