嗚呼、今日は厄日だ!
どうすりゃいいんだよコノヤロー。
malevolo!
09〜sospirare!〜
「…はぁ」
俺は本日何回目かのため息をついた。
訳の分からない世界に来て3時間くらい経っただろうか。
あれから冷静になって、何回も頬をつねってみた。
痛みは相変わらずあって、これが夢ではない事を悟った。
制服のままだと目立って嫌だったため、とりあえず呉服屋を見つけて着流しを買った。(何でこの金使えるんだよ)(まぁ使えて良かったけど)
そんで今、俺は公園のベンチに座って冒頭に戻る。(リストラされたサラリーマンみたいだ)
「どーしろってんだよチクショウ」
俺の所持品。
財布(残り2千弱)、制服(着てたヤツ)、それから携帯電話。
唯一頼りになりそうな携帯は、こちらの世界でも普通に使えるようだった。(アンテナがちゃんと3本立ってた)
知ってる奴に片っ端から電話をかけた。
“こちらの番号は現在使われておりません”
望みも虚しく、電話が繋がる事はなかった。
「これからどーすっかな…」
金は残り2千円。宿に泊まれる訳もない。
「っあー!イライラする」
考える事が嫌いな俺。今の気分は最悪だ。
「どーしたのぉ?オニイサン」
「彼女にでもフラれちゃった?」
「…あん?何だテメェ等」
うなだれていると、いつの間にか俺の前には数人の男が立っていた。
「ボク達今お金なくて困ってるんだよねェ〜」
わざとらしく語尾を伸ばすそいつ等。いちいち頭にくる。
「悪いが俺も金なくて困ってんだ。他あたってくれ」
しっしっ、と俺は手を払う。
「あ?何だその態度。俺等攘夷志士だよ?」
「…攘夷、志士?」
…攘夷って確か…外国人を追放する奴等だよな。その後討幕思想に変わったんだっけ…
何気に日本史の授業が役に立つ。(記憶力は結構良い自分を心の中で褒めてやる)
「俺らに逆らうと痛い目見るよ〜?」
ニヤニヤと笑うそいつ等に腹が立つ。
「っせーな…俺は今機嫌が悪いんだよ。あっち行けよ」
「っこのガキがァァ!テメェ等やっちまえぇぇ!!」
俺の言葉が気に入らなかったのか、そいつ等はいきなり俺に襲いかかってきた。
よく見ると、そいつ等は刀を持っているではないか。
「っにすんだコノヤロー!」
そいつ等は丸腰の俺に容赦なく刀を降り下ろす。
「くそっ!」
負けじと俺も反撃する。しかし素手対刀、1人対数人。
力の差は歴然。
「げほ…っ」
「オイオイ、さっきまでの威勢はどうしたァ?」
持ち前の反射神経で避けてはいるものの、所々かすって血が出ている。
そいつ等はニタニタと笑いながら、俺の髪の毛を掴む。
(…んで、こんな目に…合わなきゃならねぇんだよ…)
抵抗をやめた俺を、そいつ等は容赦なく殴る。
「っ…」
「寝るのはまだ早いぜェ!?」
口の中が鉄の味で気持ち悪い。
あぁ、もうダメだ、身体が言う事をきかない。
瞼もだんだん下がってきた。
俺、こんなとこで死ぬのかな。もし死んだら、遺体とかどうなるのかな…
「おいおい、丸腰の少年1人に集団リンチですかぁ?コノヤロー」
俺の瞼が閉じていく中、間の抜けた、けど聞き慣れた声が聴こえた気がした。
嗚呼、今日は厄日だ
眠りにつく直前、俺は見慣れた銀色を見た気がした。
sospirare(ソスピラーレ):イタリア語
意:ため息をつく,苦悩する
080810
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