[携帯モード] [URL送信]
039






「神原さーん、羽川さーん」
「おそーい真宵ちゃん」
「うむ、もう食べてるぞ」
「こらこら、君も遅れたでしょ」
「ふへぇ…す、すみませんん〜」

どさ、
と裏庭に座る
ここは外で草原なのに
虫があまりいないから、ビニルシートもいらない
絶好の穴場だと、私は想う
学校の地図を見たら、ここだけ何も書かれていなくて
来てみたら、この通りだった
私達と、千石ちゃんや戦場ヶ原さん、阿良々木くん以外知らないはず

毎週水曜日の昼休みだけ
学年の違う私達は、集まる
三年の私、羽川翼
一年の神原駿河、八九寺真宵
みんな、彼が繋げてくれた絆
私だけ三年って言うのが、あれだけどね

「今日のご飯はー、メロンパンなのです」
「ご飯じゃなくてパンじゃない」
「羽川さん、そこはスルーです」
「私はまあ、いつも通りお婆ちゃんが作ってくれた弁当だな」
「わたしは、今日はハンバーグにしてみました」

なぜか皆、初めに見せ合う
この行為が、くすぐったいくらい嬉しい

「購買部でですね、ユマサキとか言う先輩を見たんですよ」
「遊馬崎さんのこと?」
「美術部の部長さんのことか」
「そうそう、その方なんですが
もう凄かったですよ
いくら持ってるんです!?ってぐらい萌えチョコを買い占めて!」
「萌えチョコ?ああ、臨也先輩が言っていたな」
「それ、普通のチョコと何が違うのかなあ?」
「さあ?なんなんでしょう?」

「そういえば私は、セルティさん見たよ」
「あの、不登校者をどうこうする先生ですよね?」
「岸谷保険医と恋仲だとか」
「そうそう、そのセルティさんが
'バレンタインはお菓子会社の陰謀だよ'
とかなんとか言ってきたの」
「あの人、イベント好きだと聞いたが」
「なんだろう…味音痴って噂はあるけどね」

味音痴って、実際なんだろう
と、思いながら自作のお弁当に手を付ける
うん、まあまあ
そういえば前、戦場ヶ原さんに言われたなあ
羽川さんにとっては、全部'良い'にしかならないんでしょう
って
…まあ、否定出来ないんだけど
そうなんだよね
私も、味音痴の一種なんだ
まずいって概念がないんだよね
もー…

「味――…といえば、阿良々木先輩は納豆が嫌いらしい」
「そうなんだ?」

納豆がきらい…って
滅多に食べるものでも無いのに

「誰からきいたんですか?」
「臨也先輩」
「うわっ…仲良いですねえあの人と
あの人、何かとちょっかい出してくるからもう…」
「いいじゃない
おでんくれるんでしょ?」
「おでんなんかじゃ釣れませんっ」

ばく、
とメロンパンにかぶりつく
あのビスケット生地が好き、と言っていたっけ
皆好きだよね、メロンパンの上部
でも、普通のパンの所も、ふわふわしてて美味しいと思うんだ
…よく、わからないけれど

「でもなんで嫌いなんだろうね」
「臭いが嫌…とか、よく言われるが」
「嫌いなモノに理由なんてあるんですかね?」
「ちょっとぐらい、あるんじゃな……
あれ?」

ざく、ざく、ざく、
と、誰かが来る
首の傷、ニット帽、小柄な体躯
一年生の、張間さん

「張間さんじゃないですか」
「穴場だと思っていたのだが
案外知られている物なのかもしれないな」
「張間さーん!おーい」

取りあえず手を振る
こちらに気づいて、駆け寄ってくる

「こんにちは、羽川先輩、真宵ちゃん、神原さん」
「どうしたんですか?こんな所で」
「誠二を探してるの」
「矢霧くんか、ラブラブだからな」
「そんな…そんなことないよ」

くす、と笑う張間さん
綺麗な顔が可愛らしい物に変わる

「どこにいったんだろうね、矢霧くん」
「学食には、絶対にいないと思うの」
「なぜだ?」
「……誠二は、波江さんが苦手なの」
「そうなんですか?」
「うん」
「………え?」

そう、なの?
そうなんだ
え、だって、ほら

「波江さんと、矢霧くんって」
「羽川さん」
「―――えと、」
「羽川さんのお弁当、美味しそうですね」

いきなりの話題転換
これは
触れちゃいけないことだったか
反省、猛省、顧みなければ

「―――…ああ、そう言えば」
「?なんだ?」
「こんな噂を聞きましたよ
確か
二年の阿良々木暦先輩は
納豆が嫌いだって」
「あー、そうらしいですね」
「そんな騒ぐ噂なのか?」
「いや、続きがあって、
えーと
その理由は、納豆がいやらしいと思われるから
だとか」
「「「……………へ?」」」

「―――ッあ!
誠二ぃー見つけたっ!」

私達の後方を見て
走り去っていく張間美香さん
その先には、矢霧誠二君
腕を組んで、歩いていく
とか
そんな描写は、どうでも良くて

「…阿良々木くん…」
「阿良々木先輩…」
「…阿良々木さん」

彼は一体
何を考えているんだか
というかあの友達の少ない(←失礼)張間さんにまで届いているなんて
どこまで広まってるんだろう、この噂



open




第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!