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「あ、ひたぎセンパイ…」
「あら、杏里」

偶然ね
と、目の前の令嬢のような先輩は言う
この人は、私の一つ上で
暦さんの、恋人、ラヴァー
人を愛せる、素敵な人

「一人?どうしたの」
「紀田君は…千石さんを探しに
いま、狙ってるって言ってました」
「まったく…なんなのかしらね
まあ、阿良々木くんに害が無いのならいいけれど」

いずれ悪影響を及ぼしそうね
と、屋上の風に髪の毛を靡かせて、先輩は言う
ベンチを人一人分空けて、彼女はこちらを見やる
座れってことかな…
座った
微笑まれた
う、うわあ…嬉しい

「そう言えばこの間狩沢さんが」
「狩沢…エリカ先輩?」
「そう、三年の
あの人が言っていたわ
'彼氏は最高ね!私に活力を与えてくれる!'と」
「へえ…そうなんですか」
「私の彼氏は狩沢さんの妄想の世界で凄いことになってるみたい」
「そうなんですか!?」

たった一文でよくわかりますね!
確かに狩沢先輩は凄いけれど!(様々な意味で)

「貴方はしたことある?折原臨也と彼のいちゃらぶしてる想像」
「想像というか…
いつも、してますよね」
「…そうね」

今だけ
あの、波江って女の気持ちがわかるわ
と、先輩は言う
儚いな…きれい
すっごく、すっごく…綺麗
先輩
戦場ヶ原先輩
好きです
大好きです
愛して、います


















「紀田…くん?」
「そー俺紀田正臣ー
気軽に正臣って呼んでねー?」

可愛いなー
可愛いなー可愛いなー千石撫子ちゃん!
大人しいから今まで存在も知らなかったけど
この間擦れ違った時、確信した!
この子は俺の運命の子だと!
だって、…だってすっげえ可愛いんだもん!
なんだこれ!奇跡?

「正臣くん」

ちょろっと前髪から覗くくりんっとした瞳がまた俺を誘う…フッ
大丈夫
ここは人通りが少ない西側渡り廊下
二人で喋っている所を見られてもー
恋人同士の秘密の会話にしか見えないのさっ
まずは外堀を攻めるのみ!
今の俺…本気です

「なにかな?」
「あ、あ、あのっ
わたしは…わたしは、千石撫子といいます
撫子って呼んでください」

はにかみ!
はにかみ!はにかみ!
やばい…初めて見た、はにかみ
はにかみってどんなのか知らなかったけど
これがはにかみか〜…
超☆可愛い

「正臣くん…紀田、正臣くん」
「なにかな〜撫子ちゃん」
「…きいたこと、あります
紀田正臣くん
見たことも…」

……………お?
おお?おおお?
これ、もしやの脈アリなんじゃね?

「暦お兄ちゃんと…よく
いっしょにいるとこ…見てます」

…おにいさん…?
え?
千石撫子ちゃんのおにいさんだからー…
千石暦さん?
え、だれ?知らない人
とゆか、えーっと
俺の知り合いの中で、暦って言えばー
…暦さん、だよな
え、あの二人兄妹?うそ、生き別れとか?
まーじーで…
じゃあ…撫子ちゃんと結婚したら、暦さんと親戚…(※色々間違ってます)
これは…
これはおにいさんと仲良いですよアピールして
それこそ城壁をがちがちに!

「撫子ちゃん」
「うん、なにかな…」
「暦さんは納豆がいやらしいよ」
「……えーっと、そうなんだ?
暦お兄ちゃん、納豆がいやらしいんだ…」
「うんそう!暦さんは、納豆がいやらしいんだよ!」
「い、いやらしい…んだ」
「そう!」
「暦お兄ちゃんは、納豆がいやらしいと思ってる?」
「そう!暦さんは、納豆がいやらしいと思ってる!」
「わ、わかった…ありがとう
そうだったんだ…知らなかった」
「うん、だから暦さんは納豆が嫌いらしいよ」
「うん、わかった
…広めれば、良いの?」
「できればね…皆に知っいてほしいから」
「そうなんだ…撫子、がんばる」
「うん、がんばって」
「じゃあ、ね…正臣君」
「じゃあー」

ばいばい、
と手を振る
あー可愛いー!
超可愛い!
可愛すぎて、何はなしてたか忘れたなー…
撫子ちゃん、なんて言ってたんだっけか…

'暦お兄ちゃんは、納豆がいやらしいと思ってる'

…とかなんとか…
…えっ!?
そうなのか!?
だから納豆が嫌いなのか!?暦さんは!
なんてことだ!
これは…これは、なんて事実だ!
あの、人生の基本みたいな人が!
こんなことを思っていたなんて!
これは、皆に理解して貰わなければ!















「あら、千石ちゃん」
「…あ、千石ちゃん」
「戦場ヶ原先輩…杏里ちゃん」

屋上から下りていた途中に
渡り廊下の方から来た千石ちゃんに出会う
どうしたのかな
なんか、凄く驚いてる顔になってるけど…

「あ、あ、あの、先輩!」
「…?なにかしら」
「せ、先輩に、撫子、伝えたいことがっ」

…………え
それ、なんか告白みたい
ちょ、っと、待って
私がいるのに、ここではちょっと―――…

「暦お兄ちゃん、納豆がいやらしいと、思ってるから、納豆が嫌いらしいですっ」

………………。

「「………は?」」

あ、つい
先輩とハモった
嬉しい…けど
だけど、だけどもっとこう…なんか

「待って千石ちゃん、千石撫子ちゃん
いきなりすぎて、状況が掴めないわ
なに?なんて?」
「ですから、貴方の恋人は、納豆がいやらしいと思われるから、納豆が嫌いらしいです!」
「………………
あ、あー…
そう…なの
初めて知ったわ
なんだ、言ってくれればよかった…のに」

先輩が
戦場ヶ原先輩が動揺している
そりゃするでしょう!
私だって罪歌だって動揺してる!
どうしよう!びっくり!

「それを広めろって言われたから…言いました」
「そうなの…ご愁しょ…お疲れ様」

ふう
と、一息吐く先輩
どうしたんだろう
大丈夫かな
先輩は繊細だから…

「わかったわ、千石ちゃん」
「そうですか…よかった」
「ええ、十二分に
そう…広めてほしいのね、阿良々木くんったら…もう」

にっこり
笑う先輩
じゃあ、と別れる千石ちゃん
ふりふり、手を振る
くるり、とこちらを向く先輩

「杏里」
「はい」
「広めましょう、全力を持って」
「はい」

先輩が、そう言うのなら








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あきゅろす。
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