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大晦日はみんなで騒げ





「「…ごめんなさい」」
「そうだね
ちょっと五月蠅かったね」

そんなシュンとされても
困るよ
僕、そんなに怒ってなかったのに

「えと、僕の魔法について、だっけ?」
「あ、はい!」
「それ、俺も知りてえ」

うー…んと
なんて言えばいいんだろう
見て貰った方が速いけど
あんまり使いたくないんだ
僕の魔法を知ってる人が増えるのもやだし…

「言いたくない、かな」
「えええぇ…」
「んだよお、期待したのに」
「ははは、ザマミロッ」

ごめん…ね?

「言いたくないんだ…」
「そ、そそそそんな、いいんですっ」
「あーあールーシィ最悪だなーハッピー?」
「あい!」
「ユウ、じゃあナツがききたがってたヤツは?」
「え、」
「ああ!ユウ、お前なんで
…なんで、フェアリーテイルを抜けちまったんだよ」

………ああ!
そういえば
そういえば、抜けたっけ
なつかしー…

「なつかしー…って、なんだよ」
「いや、だって、僕…
僕そんなにギルドに入り浸ってなかっただろ
だからそんな…愛着はなかったから」
「あァ!?」
「ちょ、グレイ!」

…怒られたのかな
グレイに怒鳴られた
そりゃあ、そうだろうね
彼はきっと、ギルドを愛してるんだろう
僕とは違って
きちんとした目的を持って入ってるんだから

「ユウ、お前そりゃー正直すぎね?」
「そうかな
わかりやすいと思ったんだけど」

そう言えば
ナツも最初は怒ったっけ
何が不満なんだー!
ってね

「でもユウさん
ほんと、愛着がなかったにしても
今まで入っていたのに
どうして急に辞めるんですか?」
「…あー…」

どうしてこの時期か、と

「んー…その
まあ、色々あるんだけど
言えない事情があって
僕、ギルドをハシゴしてるんだ」
「………ハシゴだァ?」
「ハシゴってなにぃー?」
「ハシゴって言うのは
ギルドに一時期入って抜ける、入って抜けるを繰り返すことよ」
「じゃあ、ユウは、いろんなギルドにいたんだね!」
「そ
で、もう妖精の尻尾にいて長く経つし…
そろそろ移動しないと」
「どうして?移動しなくたって良いじゃない
いてよ、妖精の尻尾に」

うー…
そりゃあ、ね
ある程度慣れた場所を離れたくはないけど
だけど、そろそろ二、三年は経つ
足がついても可笑しくないから

「ごめん、ルーシィ
僕、辞めるって決めたんだ」
「〜っ!!
ナツ!」
「おう?」
「アンタ、ユウさんを止めに来たんじゃないの!?
止めなきゃ!」
「はあ?何言ってんだよ」

そういってナツは、荷物を手に取る

「俺はユウが抜ける理由を聞きにきただけだ
止めに来たワケじゃねえ」
「なっ…!!
ナツ!?なんでよ!なんでそんなにあっさり引き下がるの!?
こんなの…こんなのナツらしくないよ!」
「そうだぜ
なんで止めないんだよ
お前のダチだろ?止めろよ」

あ、うあ…
なんでナツが責められてるのか
さっぱりわからない…
僕としては、止められなくて嬉しい
ナツが、僕を理解してるみたいで
すごく、すごく嬉しいのに

「だってユウだから
ユウ、実際ギルドにいていないよーなモンだし
それに、どこへいたって絶対会えるから」

だから
俺は止めない
さき帰る

そう言ってナツは出ていった
バイバイも言えなかった
寂しいけど
ナツのそんな所、好きだよ

ハッピーが、そんなナツを見て
ひゅうんと追いかけていった

「そんな…」
「ナツの野郎ォ…」
「二人とも」

二人がこちらを向く
僕は二人に荷物を持たせる

「君たちはチームでしょ
ナツと一緒に帰りな」
「っいや!ユウさんも一緒なの!じゃないとやなの!」
「そーだぜ!自分から抜けるなんて許さねえ!」
「君等は…」

会ったばっかりなのに
あのギルドは、そういう場所なんだ
そんなギルド、もう出会わないんだろう
わかってる
わかってるけど、移動しないとだめだから
だから

「ごめん
決めたんだ」
「「…っ!!」」

…はあ
全然納得してない、のかな
仕方ない、よね
説得して無理なら
実力行使だよ

「っきゃ…!?」

ルーシィが立っている木造床が盛り上がる
その床はトランポリンのようにルーシィを跳ねさせて
ぽーんと彼女を外へはじき出した

「っな!?…ぅわっ」

グレイには床の一部が伸びて、枝のようになり、絡みつく
ずるずると引きずられ、ドアに連れて行かれるグレイ

「っちょ!待てよォ…!
アイスメイク、'床'!」

床から生えている枝ごと凍り付き、砕ける
ほ、とした途端
砕けた氷の破片が集まって
絨毯のようになり、グレイを運んでいく

「うわ!?なんで…」
「ばいばい、グレイ」

どんどん遠のいていくグレイ
きっとナツの所へ追いつく
ばいばい
ばいばい
次、会えるかわからないから
またね、は言わないね
言えないね

「一つだけ教えろォ―――ッ!!!!」
「!」

声だけが聞こえてくる

「ユウ、お前はなんの造形魔道士だ!?」

…気になるんだ
やっぱり皆
知りたがるよね
土、木、氷
これだけの物の形を変えたんだから

「…有限!」

あらん限りの声を出す
伝わるか解らない
意味が伝わらないかもしれない
だけど
だけど
知りたがり屋な君に

「有限の造形魔道士だよ!」

ばいばい、グレイ
大丈夫
宿は全部、直しておくから
さようなら
さようなら







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