D.Gray-man *2 名前が教団にやって来たのはいつだったろう。 まだまだ母親に甘えたい年頃ではなかっただろうか。 突然家族から引き離され此処に連れて来られた筈なのに、名前は文句一つ言わなかった。 『大丈夫だよ?』 名前は僕に微笑みかけて確かにそう言った。 その時、僕は思ったんだ。 "この娘を守りたい"と… いつでも自分より他人を優先する。 例え自分が危険な状況に陥ろうとも。 今回の様に怪我する事なく任務を終えてくる事は滅多にない。 大抵、大怪我をして帰ってくる。 彼女のイノセンスは寄生型故に、アクマのウイルスに侵される事はない。 だからといって、死なない保証はどこにもない。 それでも、 『大丈夫、心配しないで』 彼女は決まってそう言う。 「守れてないじゃないか…」 ぽつりと口から零れ出た言葉。 守りたくとも、僕にはアクマと戦える力は持っていない。 こうして、教団内で帰りを待つ事しか出来ない。 そんな自分が不甲斐ない。 「いっそのこと、責め立ててくれればいい」 呟いた言葉は誰に聞かれる事もなく、ただ部屋に木霊(コダマ)して消えていくだけ。 名前が提出した報告書をチェックし終えたコムイは、静かに部屋を出た。 . ←→ |