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NOVEL!
歪んだ愛情(γバジ)
15禁以上



ハァ、ハァ・・・。

何人かの人間のものと思われる息遣いがせわしなく響く。

バァン、と大きな音がして、人々は己の顔を腕で覆った。

上から電撃と共に、ビリヤードの球が落ちてくる。

あたりが穴だらけになった。

「うわぁっ!」

爆風で少年は道の端に吹き飛ばされる。

「大丈夫か。」

駆け寄った男も、次から次へと落ちてくる球が肩をカスって呻き声をあげた。

「ターメリック!!」

もう一人の男が叫んだ。

「親方様、私がお守りします。」

女性が男の前に立ちはだかる。

この男性二人、女性一人、少年一人の四人組は門外顧問チームの任務を遂行して、本部へ戻る途中を攻撃されていた。

このチームは普段少人数で動くため、人手が足りなくなることがしばしある。そして、現在進行形でもある。

砂煙が辺りを覆い尽くし、視界が悪くなってきた。

このままでは全滅の可能性がある。


そのとき、一人の少年は言った。

「先に行ってください、親方様。」

「しかし・・・。」

男は少々考える素振りを見せた。

「親方様・・・。」

女性が心配そうな顔で男性の顔を見つめた。

「拙者たちがこの任務に携わったのは、親方様をお守りするためです。拙者が時間を稼いでいるうちに、遠くへ!」

少年は腰のブーメランに手をかけ、構えている。

「すまん、バジルッ!!」

三人はバジルと呼ばれた少年を残し、去っていった。




砂煙が晴れてきた。

攻撃は常に上からされていたが、現在は上に人影は見えない。

ということは。

先ほど攻撃元だと思われていた場所に敵がいる可能性が高い。

バジルは慎重に歩みを進めていく。

この角を曲がれば・・・

体の向きをくるっと変える。

「貴様・・・電光の・・・っ!?」

黒い服の男はバジルに目をくれ、にやりと笑った。

「お前、ボンゴレの・・・。」

!?

「う・・・ぐぁ・・・。」

「探す手間が省けたぜ・・・。」

男はバジルを容赦なく殴り、その小さな体を持ち上げて行ったのだった。










































・・・・・・。






























「う・・・。」

目を覚ますと、真っ暗だった。

視界には黒という色しか入ってこない。

「目が覚めたか。」

声の方向で前に人がいるのだということがわかった。

「ボンゴレのアジトはどこだ。」

「・・・。」

今、自分は敵陣にいるのか。

ぼんやりと思う。

もう、生きては帰れないだろうな・・・。

手首が後ろで一束にされている。

首にも何か巻きついている・・・首輪だろうか。

その輪っかから伸びている鎖はどうやら目の前に立っている誰かにもたれているようだった。

体勢は最悪。wのような内股姿勢。

当然のことながら、指につけていたリングと愛用のブーメランは手元にない。

「ボンゴレのアジトはどこだ。」

この声は・・・気絶する前に聞いた声だ。

ブラックスペル・・・通称電光のγ。

「お前、もう命は惜しくないようだな。」

「・・・。」

いざとなったら、舌を噛み切ってでも死んでやる!

とは言わないが、実際そのつもりである。

きっと自分にはボンゴレのアジトを案内する役目が回ってくるのだろう。

口を割る気はさらさらないが。

「もう一度言う。ボンゴレのアジトはどこだ。」

「知りません。」

「ふざけるなよ・・・。」

γがしゃがんだのがわかった。

バジルの肩に何かが触れる。

手でないことは確かであった。

「お前なんてその気になればすぐに殺せるんだ。立場を弁えろ。」

「知りません・・・そんなの・・・っあ!?」

肩から全身に掛けて電気が流れた。

痛みと驚きで思わず声を上げる。

「う・・・ぁ・・・。」

「おいおい、俺の異名を知らないのか。」

知ってる。電光。電光のγ。

「これ、キューだぜ?」

なるほどな。

バジルは納得した。

キューから電気を流したと。だからビリっとしたのか。

「さぁ、どうする?」

γはキューで、挑発するようにトントン、と彼の肩を叩いた。

「知らないものは知りませんね・・・うぁああっ!!」

「死にたいのか。早く言え。」

「ハッ・・・ァ・・・。知らなッ!」

バジルの言葉を遮って、γはバジルを抱いて立ち上がった。

「何を・・・。」

「黙れ。」

今までいた部屋のドアが開けられる。

「うっ!」

いきなり感じた明るさにバジルは思わず声をあげた。

眩しくて、しばらく目が開けられない。

違う部屋のドアが開けられたようだ。

バジルはいきなり手を放されて、尻もちをつく。

「来い。」

γに首の鎖を引っ張られて、バジルは渋々あとに続いた。

「・・・?」

風呂場・・・?

「ただの湯じゃねえぞ。」

γが言った。

「何かが入ってるからな。」

「御主まさか・・・。」

「死にたくなかったらさっさとはけ。」

毒薬でも入っているのだろうか。

「知りませ・・・うわっ!」




バッシャーン・・・




γはバジルを湯船に突き落した。

「さあ、はけ。」

彼はキューをバジルに突きつけた。

「いやです・・・。うあああっ!!!」

電気が流れる。

「あッァアっ!!」

バジルが身を捩った。

両手が使えないバジルはバランスを崩して湯船の中に体がすべて入ってしまった。

ゴボゴボ・・・と音がする。

なおも、電撃はやまない。

バジルは顔を出そうと試みるが、電気が流れていることで、うまくいかない。

このままでは、肺がもたない。

水をたくさん飲んだ。
















「ガハッ・・・ゴホッ!」

γはキューをバジルの身体から離すと、彼の頭を掴んで水面から上げた。

「ハァっ・・・ハ・・・ァ・・・。」

「言え、アジトはどこだ。」

「ハぁ・・・。並盛・・・。」

「並盛の・・・どこだ・・・。」

γは手がかりが一つ増えたことで少し慎重になる。

だが、当のバジルは体力が持たなくて、意識を失った。






























ふわふわする・・・なんで?
































ハッと飛び起きるとベッドの上だった。

だが両手首には鉄鎖が巻きついていて、頭の上で一つに戒められている。







身体が・・・・・・???

何かおかしい。














「どうだ、薬が効いたか?」

「何を入れた・・・。」

「さぁ、なんだろうな。」

γは彼に近づき、彼の顎に触れた。

「さっきの続きを言え。並盛のどこなんだ。」

「・・・ッぅ!」

「我慢しようとするときついだろ。ブラックスペル一の医者が開発した『自白剤』だからな。」

そして、

「どこだ。言え。」

γはバジルに顔を近づける。吐息が頬にかかり、バジルはフルっと震えた。

「・・・っッぁッ!」

「可愛い反応しやがるな・・・。さぁ。言え!」

「い・・・や・・・です。」

「自白剤を抑えるたぁ・・・。」

そしてγは笑った。

「また拷問に逆戻りだな。」




























「やめろ、放せっ!」

















抵抗できる限りはしたのだが、はやり年上の男たちに抑えられては敵わない。

バジルは小さな部屋に入れられた。

手首は前で戒められたままで、なにかリモコンのようなものを握らされて。



ボっっとなにかガスのようなものが出てくる。

「なっ・・・。」

「それは二酸化炭素だ。」

上から放送が聞こえてくる。

「二酸化炭素・・・?」

「その部屋の広さ考えてみろ。」

せいぜい、高さ2m、縦横1mというところか・・・。

「現在酸素濃度は19%だ。そのボタンを押せばガスの噴出を止めてやる。言う気になったらボタンを押せ。だが、早くしないと、命に関わるからな。」

通常酸素濃度は21%くらいである。

今現在でも、少々酸素が薄いな、と思われるほど。

これが長時間続いたら・・・

少し呼吸が苦しくなってきた。

「押さなくて大丈夫か。」

どこからか声がする。

「ほんとに死ぬぞ。」


















ひどい頭痛がしてきた。

呼吸も苦しい。

息をする度に喘鳴がする。

「ハァッ、ハァッ・・・っ!」

全身の力が抜ける。

倒れた拍子にバジルの手からリモコンが転がり落ちた。

汗が流れてきた。

「ほんとに死ぬぞ。」

γがバジルに声をかける。恐らくスピーカーなのだろう。声が少々くぐもっている。

誰がいうものか、という威勢だけはいいものの、体力が持たない。

「ハァっアッァッハッ・・・。」

呼吸が不規則になる。





























息ができない・・・ッ
























そのままバジルの意識は飛んだ。

γは慌てて部屋のドアを開け、バジルを引っ張り出す。

生きてる・・・。

ほっと胸をなでおろしてから、γはハッとした。

今、安心しなかったか・・・?

フルフルと頭をふって、バジルの顔を見下ろした。

汗がビッショリで、だいぶ青白くなっているが、呼吸困難もおさまり、落ち着いたようだ。

また拘束しておかなくては。

γはバジルを抱えると、先ほどのベッドルームへと歩いた。





















なんだかボケーっとするなぁ・・・

ボーっとしながらバジルは思った。

「起きたか。」

・・・・・・・・・生きてる!?


バジルは正直驚いた。

意識を失ったとき、絶対命を落としたと、思っていた。

「お前・・・」

γがバジルに歩み寄る。

バジルは警戒した。

「そんなに警戒しなくてもいいぞ。俺はもうお前に危害を加えるつもりはない。」

「何を・・・?」

何を言っているのだ、この人は。

「俺はもう、お前を傷つけたくなくなった。」

そういえば、どこにも枷はついていない。

「どういう風の吹きまわしですか。捕虜からアジトの位置を聞き出そうとしないなんて・・・。」

「それはな・・・。」

γはバジルの顎を掴んだ。




























「お前が好きだから。」

































「ん・・・ァッ!?」

一瞬何が起きたのかわからなかった。

敵方になぜか告白されて、それで・・・


接吻を・・・ッ!?


息苦しい。

「ンンン・・・っ!」

胸をドンドンと叩いて、苦しいということを伝える。

が、まったく聞いてもらえない。

視界がかすむ・・・。

























「γ隊長!」












γの部下が部屋のドアを開けた。

と、同時にその部下は口を噤んだ。

「なんだ・・・。」

γが不機嫌そうに部下を睨む。

「沢田家光と名乗る者が取引を申し出てきました。」

「なんだとっ!」

γは勢いよく立ちあがる。

「取引き内容は・・・?」

「捕虜の少年と、ボンゴレアジトの場所の交換だそうです。応じなければ、ただちに突入すると・・・。」

「・・・・・・。」

この状況ではまずい。

今現在ブラックスペルの何名かしか、この場所にはいない。


γは決心したように顔をあげるとバジルにつかつかと歩み寄った。

無言でバジルの手首に鉄鎖を巻いていく。

バジルは無抵抗のまま座っていた。

「来い。」

γに鉄鎖の先をひかれてバジルは立ち上がった。























外には門外顧問のメンバーが何人もそろっていた。

「取引に応じてもらえるんだな。」

家光がγにいう。

「アジトが本物かどうか確かめさせてもらうぜ。」

「これが地図だ。」

家光はγに紙を渡した。

γは部下に無線を持たせた。














部下から連絡が入るまでの時間が長かった。

その間ずっとバジルは鎖で繋がれていて、γと家光は睨みあっていた。

『隊長!』

無線から声がした。

「どうした。」

『ボンゴレのアジトらしきものがありました。』

「そうか・・・。」


γはバジルの肩を掴み、自分の正面へ向かせた。

そして、手枷を外すと、後ろ向きにして、背中を押した。

「バジル、済まなかった。」

家光がバジルを支える。


その体温にバジルはほっとし、そのまま深い眠りについた。


































「なんだここは!」

γたちはボンゴレのアジトと称された場所へ足を運び、絶句した。

人が誰もいない倉庫だったのだ。

γたちブラックスペルは、そこで地団駄を踏むことになってしまった。










END


























☆★☆★☆★☆

好きなキャラは徹底的に受け。γは絶対攻め。
好きなキャラは当然、10年後に登場させたい。

バジルが大好きな管理人が思いついたカップリングには様々な思いが詰まってるんです。


読んで下さった方、ありがとうございました。

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