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NOVEL!
だってオレ王子だもん(ベルバジ)
15禁以上

リング争奪戦の前設定で。























今日はよく晴れていた。

快晴、と言ってもよいくらいに。

いつもならもっと軽い足取りなのに。

なぜか今日は重たくて。










買い物が憂鬱になるなんて・・・。






























親方様からの頼みが嫌になる筈は無いのに。

どうして、今日はこんなに憂鬱なんだろう。

何か嫌なことでも起きるのだろうか。






















バジルは並盛の商店街を目指して、てくてくと歩いていた。
家光に買い出しを頼まれたためだ。
よく晴れていて、なんというかピクニック日和だった。
バジルは買い出しメモと睨めっこをしている。
人々にしてみれば、少々滑稽かもしれない。

そんなバジルは、あろうことか尾行されていることに気がつかなかった。
普段気を張っているせいか、今日は若干緩んでいたらしい。

肩を叩かれた。










「バジルちゃん・・・。」












咄嗟に振り向くと・・・。


「べ・・・ベルフェゴール!?」


バジルは驚いて思わず叫んだ。

「あれ?バジルちゃんの二人称って、『殿』をつけるんじゃなかったっけ?」

バジルはメタルエッジに手を掛け、警戒をする。

「敵方は別だ・・・。」

「言葉も敬語使わなくなるんだね。王子に対しても。」

「当たり前だ。拙者に何の用がある・・・。」

切り裂き王子。ベルフェゴールの異名が持つ意味を、バジルはよく知っていた。

知った上での警戒。

「用って・・・ただ一緒に来てほしいだけ・・・。」

「なぜだ。」

バジルは一時も気を緩めずに真剣に構える。

「なぜって・・・わざわざ理由を言わなきゃいけないの・・・めんどくさい。なんで王子が理由なんか・・・。いいよ、一緒に来ないんだったら・・・。ウッシッシ・・・。」

気味の悪い笑い声をあげた・・・と思ったら・・・。




パァン




何かが割れた。

バジルは驚嘆して音がしたほうへ目をやる。

その先には赤い服を着た少女の、悲しげな表情が映った。

「お母さん、風船が割れちゃった・・・。」

「しょうがないわねぇ・・・。」


まさか、とは思うが。

バジルが再びベルに目をやった。

「オレが割った。バジルちゃんがいうこときいてくれないからだぜ。」

「何を言って・・・。」

「オレの言うことが聞けないなら、今度は・・・。」

「やめろっ!!」

ベルの次の行動を察し、バジルは叫んだ。

「じゃあ、オレの言うこと、聞いてくれるんだね。」

不本意ではあるが、いた仕方ない。

バジルは小さく頷いた。

「まずは・・・オレのこと『殿』をつけて呼んでよ。」

「べ・・・」

「躊躇してる?」

「ベルフェゴール殿っ。」

半ば自棄になってバジルは言う。

「次から言葉を発するときは全部敬語で話してね。それと、ベルフェゴール殿じゃなくて、ベル殿って呼んで。」

「わかりました。」

ベルはまたウッシッシと笑う。

「王子、素直なヤツ大好き。ついてきて。」















ベルの向かった先はタクシー乗り場。

「バジルちゃん、先乗って。」

「はい。」

向かう先はどこなのだろうか。

「適当に走って。止めてって言ったらすぐ止めてよ。」

「かしこまりました。」

運転手は前を向いて運転し始めた。

「バジルちゃん、緊張してるでしょ。」

「そんなことはありませんよ。」

バジルは冷やかな口調で返す。

「やっぱり敬語のほうがバジルちゃんぽくていいや。王子、満足。」

この人は何がやりたいのだろう。

バジルはずっと疑問に思っていた。











「止めて。」










ベルが言った。タクシーは道の脇に止まる。

「3500円になります。」

「カードしかない。」

「申し訳ありません。この車はカードには対応していないのですが・・・。」

「なら拙者が・・・。」

バジルが財布を取り出そうと試みる。


が。


「あれ?」

ない。あるべき場所にない。

落としたのか?

「こっちこっち。」

ベルが小声でバジルを呼んだ。

「べ・・・ベル殿!!!」

彼の財布はベルの手の中に収まっていた。







「ねえ。」










ベルが運転手に話しかけた。

「タダ乗り、許してくれない?」

「お客様、公共の乗り物にはルールというものがございまして・・・。」

「関係ない。」

ベルがひょいっと手を動かした。

















「ぐあぁあ!!!」












運転手が血を流してハンドルにもたれかかる。















「ベル殿!!!何をなさって!!大丈夫ですか。しっかりしてください!!」

バジルが大声で運転手に声をかけるが反応しない。

救急車を呼ばなくては。

バジルが携帯を探し、ポケットに手を入れた時だった。

「バジルちゃん、早く車から出て。」

「できません!!!」

「できないの・・・。」













ベルはまたひょいっと手を動かした。











ガチャン!!













花瓶の落ちる音が聞こえた。

近くの店だろう。

人々が集まった。































「バジルちゃんが言うこときいてくれなかったら、オレここにいる人全員殺しちゃうかも。そうしたら、この街は血の海と化すね・・・。ウッシッシ・・・。」












不本意というよりも、理不尽だ。

ベルはここにいる人々全員を人質に取っている。



「早く出てよ。」


思案していたバジルは少々力が抜けていたらしい。

車から転がり落ちた。


「・・・っつ。」

「早く立ちなよ。」


ベルがバジルの服を掴む。

「早く立ってよ。」

バジルは車から落ちた際に、全身を強く打っていた。

痛みでうまく動けない。

「バジルちゃんは、そんなに血の海が見たいんだね。王子、準備万端。」

ベルがナイフを持つ。そして投げる構え。

「やめてください!!」

バジルは痛みを堪えて必死に立ち上がった。

「もう遅いよ。」

ベルがナイフを放った。

その先に、バジルが立ちふさがる。

一瞬の間が空いた。











「く・・・ぅぅ・・・。」












バジルの右腕から鮮血が滴り落ちた。

「バジルちゃん・・・。」

「拙者、ベル殿の言うことは何でも聞きます。ですから、お願いです・・・やめてください・・・。」

バジルは必死になって言う。

ベルは怪しげな笑みを浮かべた。

「ほんとだね。」

「はい。」

ここは、従うしかない。

従わなければ、この人は何を仕出かすか分からない。

「じゃあ、この薬・・・飲んでみて。」

ベルはポケットから瓶を取り出すと、バジルに一粒渡した。

「わかりました。」

バジルが素直に飲み込む。

そして次の瞬間、ベルの腕の中へと崩れ落ちた。































ガチャン






















金属音が聞こえた。























ここは、どこだ・・・。





















バジルは目を覚ました。

慌てて起き上がろうと試みるが、右腕の痛みに、動きが止まってしまった。

思ったより、傷が深いようだ。

腕の傷に目をやった。

















!?



















バジルの手首には重たそうな鎖が巻きついていた。

それのおかげで、バジルはベットに寝ている、ということを知ることができたが、同時に自分は拘束されているのだという恐怖感に襲われた。

上から見たら、『マッチョ』の様な腕の形になっているのだろう。両腕の自由が利かない。

先ほど聞いた金属音はこの鎖の音だったのか。

バジルは妙に納得してしまった。














「目が覚めたの?」
























横に視線をもっていくと、ベルの姿が映った。

「さっきバジルちゃんが飲んだ薬、即効性の睡眠薬だったんだよね。けっこう聞いたでしょ。」

「はい・・・すぐに眠くなってしまって。」

これからどうなるのだろう、という不安が募り、自然と声が震えてしまう。

「バジルちゃん、オレのいうこと何でも聞くって言ったよね。」

間違いはない。そして本意でもない。

「はい・・・・・・。」

「覚悟してよ。」

「えっ!?」

唐突なベルの行動にバジルは焦った。

「ん・・・ふ・・・・?」

息苦しさと、ベルの顔が妙に近くにあるという事実で自分は接吻をされたのだと分かった。

が、以前あいさつ代わりにしたものとはぜんぜん違う。

濃厚、というかなんというか。

バジルが考えを巡らせているときだった。









「ン・・・ンン!?」













舌が侵入してきた。

思うように息ができない。

苦しい。

「ン・・・ふ・・・。」

「バジルちゃんが息していいのは王子が話してるときだけ。」

「なっ!?ンンン!!!」







































長い間、息をすることができなかった。

バジルは喘いだ。

激しく肩が上下する。

「喘いでいるところ、かわいい♪」

なぜかご機嫌になっているベルは、またバジルに顔を
近づける。

「もう・・・十分でしょう・・・。」

バジルがもがいた。顔を横に傾ける。

「まだだよ。バジルちゃん、なんでも言うこときくって言ったじゃん。今日はとことん付き合ってもらうから。」

そして・・・・・・


























「ぐ・・・ぁあ!!」

























バジルが痛みに顔をしかめる。

「血の味がする。」

当たり前だ。ベルは今、バジルの腕の傷口を舌で舐めているのだから。

何の手当ても施されていない傷に、液体は容赦なく侵入する。

バジルはその度に呻いた。

「痛っ・・・!!!もうやめてください!!!」

涙を浮かべながら乞う姿にベルは余計に調子に乗った。

「ぁああ!!」

「バジルちゃん、かわいいなぁ・・・。王子、感激。」

本当に嬉しそうに傷口を舐めるベルは、獣そのものだった。

バジルの瞳から涙が溢れ出した。

歯を食いしばって痛みに耐える、その姿にベルは何かを忘れたかのように、ただひたすらと傷口をなめ続けた。










































バタン

























そんなベルを、ドアを閉じる音が一時停止させた。

「・・・何やってんだぁ、お前。」

髪の長い青年が部屋へ入ってきた。

「邪魔しないでくれよ。いまいいところなんだぜ?」

スクアーロが目をまん丸にしてベルを凝視する。

「邪魔するも何も、家光がたくさんの部下を引き連れて、屋敷を囲ってるぜ。このままじゃ、侵入されかねねぇ。」

親方様・・・。

バジルが朦朧とする意識で主のことを思った。

「ちぇっ・・・いいところだったのに。」

ベルが舌打ちをしながらバジルに巻きついている鎖を取った。

拘束具が外されても、バジルは痛みで動けない。

「しょうがねぇなぁ・・・。」

スクアーロがバジルを抱き上げた。

















ここはヴァリアーの屋敷だったのか・・・。

結局、ベルフェゴールは何がしたかったのだろうか。

スクアーロに抱かれ、階段を下りている僅かな時間、バジルは物思いにふけった。

そして、そのまま深い眠りへと落ちていった・・・。


  




☆★☆★☆★☆★

ここまで付き合ってくださった方、ありがとうございました!!!!

ベルちゃんの口調がよくわからなくて、コミックを何度も読み直した(笑)



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