Andante
お互いに学園を卒業して、それぞれ自分の道を歩み始めた。
君の腕の中はあたたかいけど甘えてばかりじゃ、いつか僕は駄目になってしまう気がする。
「僕、イタリアに留学したいんだけど」
「いいよ」
反対されると思っていた。
だけど、意外にも君は僕の背中を押してくれた。
でも、それは大きな間違いだと気づいてしまった。
君と離れて二日も経っていないのに僕は君が恋しい。
『咲羅』
僕を呼ぶ君の声が懐かしい。
『咲羅』
君がいない異国での生活は息苦しくて、想いだけが先走ってしまう。
君の腕のぬくもりがないと眠れないなんて、君には言えない。
『愛してるよ、咲羅』
そうやってずっと僕を縛ってくれればいいのに。
君と離れて、僕は君といることだけで生きれるのだとわかったから。
君がいない世界なんて、音のない世界と同じ。
『俺の愛しい咲羅』
流れるようにゆっくりと僕の時間は流れていく。
君の体温を今は感じることができないけれど、僕はずっと君を想うよ。
どんなに離れていても。
*END
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