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怪しいヤツ!
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* * *


玄関をポケットの鍵で開け、いざ恋人の元まで!というところで、銃口を腹部に向けられた。


「止まりなさい!怪しいヤツね…名前は?ここで何をしていたの?」


朝から幾度となくこの台詞を聞いていた。
今日で四人目―…だが、彼女は他の三人とは違い何処と無く恐ろしさを纏った笑みを浮かべている。

無邪気な子どもの笑みならまだ良かった…

(見た目は一応子どもなんだけどね)


「黒羽快斗、愛しの新一に会いに来ていたところです。怪しいヤツではありません。」

「ふぅん…要注意ね、気が抜けないわ。そのまま両手を上げてこちらにいらっしゃい?」


勿論自分には新一とあれやこれやする事以外にやましい事など無いのだけれど。
彼女が言うことには従わなければならない…人間として本能的に身を守る為の感が働いているのだろう。


逆らっては危険だ。

何故なら彼女の右手には麻酔銃らしきものが握られているから。

(ただのモデルガンだと信じたい)



「ねぇ…俺はただ新一に会いに来ただけであって、別に怪しいものではないのですよ」

「そんなこと分かってるわ。」


にやりと彼女の口元が引き上がる。

新一宅に任意侵入した黒羽快斗は、そこで待ち構えていた小さな極悪人に“要注意人物”
として捕らえられた。




* * *



「怪しいヤツ!名を名乗れ〜」

昼間新一の使いで博士の家に行った。
休日ということがあってか…家には何処と無く見覚えのある子ども達がわらわら。

どうやら皆で少し古い刑事ドラマや時代劇を観ていたらしく、まねごとなのか手には丸めた新聞紙を拳銃に見立てて突き出している。

「かいとお兄さんだよー」
「怪しいヤツ!逮捕逮捕ー!!」


…名乗れと言っておいて、すぐ逮捕とはあまり良い警官ではなさそうだ。
しかし子供とは可愛いものだなぁと染々とも思う、無論彼も幼少期には似たような事をしていたのだ。


「怪しいヤツを捕まえました!」

「やったな光彦!」

「すごいわ光彦くん!」


ここまでは良かった。
だが確かにこの後背後に気配を感じ、また鏡に映った彼女に悪寒がしたのだ。


(お願いします神様あの微笑んでいる小悪魔をどうにかしてください…)


「良かったわね、大物が捕まって」




* * *



意外にも彼女は何もしてこなかった。
てっきりまた変な薬の実験台に…と考えていた自分にとってはこれ幸い、その後さくっと用事を済ませ一旦家に戻り、そして戻ってきてこの有り様。


(あの時感じた嫌な感じは、当たってってことか…)



「工藤くんがね、怪しいヤツがいたらやっつけてもいいですって」

「俺をその対象としないでほしいんだけど;」

「お黙りなさい。」


明らかに下の位置発せられる冷たい声が、自分の上に降り注ぐ。


(誰か…誰か助けて…;)
(刑事に追い掛けられる方がまだマシだ!)



「何か捕まったかぁ〜…おぉ、超大物じゃん。」

「えぇ。今夜はご馳走だわ」


どことな“狩猟”の話のように聞こえたのは自分だけだろうか。


何はともあれ我が愛しき人。

パジャマ姿に一瞬今の状態を忘れる程目を奪われた。


「新一!ちょっと、あの…助けて?」

「怪しいヤツ!」

「えぇ??;」


…まさか、まさか彼にまで不審者扱いされるとは…

(今日家に呼んだ本人がそれを言うか!)


「だって〜、怪斗だし。」

「違うよ。今の漢字感じが違うよ」

「煩いくだらねーこと言ってんじゃねー」

「ねぇ、コレは始末していいの?ダメなの?」


少し飽きたのかそれとも痺れを切らしたのか、新聞紙ではない銃を手にした少女は今後の彼の生死を問おている。


「んー…ごめんな宮野、これは俺のだからダメなんだ」

「新一…(泣”」

「…そう。あなたのものなら仕方無いわ…私が手を出す部分も残らないものね」

案に彼の近くにいる=無事ではいられないと言っている。

彼女は静かに手を引いた。



「怪しいヤツ、名を名乗れ」

「黒羽快斗、愛しの新一に会いに来ました」




大好きな探偵にに捕まって、彼は暫く捕らえられたままだったとか。

無論喜んで、両手を差し出し彼の手にそれを拘束されるのを待った。


(でも直ぐに俺が捕まえちゃうんだけどね!)



 * * 【 怪しいヤツ!】 * *



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