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愛のかたまり(小説)
『愛の才能』C(テロ)


「はぁぁぁぁぁ〜…」


最近クセになったんじゃないかと思うくらいのため息を吐き

玄関の前まで来る。


この扉を開ければ忍チンがいる。

それは決して悩むことではないし、むしろ嬉しい。

だが今夜は別だ。

昨夜の一件の説明やら、忍チンが正直凹んでいるのをなんとかしなくてはならないし…

だがやはり感情のまま流されるわけにもいかないし


「俺に、どうしろと言うんだよ…;;」


そう独り言を言って、思い切って扉を開けた。






「ぁ………、…おかえり。」


リビングまで行けば、テレビも付けずにダイニングテーブルの椅子に座っている忍。
その姿が離婚を切り出した時の理沙子に似ていて、少し驚いた。


そして忍チンは…


無表情・目に力がない・視線が下に下がっている、


…このポイントからすると、やはり落ち込んでいるようだ。



そんな忍を少しの間眺めてから中に入ると、荷物をソファに置き、自分も忍の向かいに座る。

と、忍が口を開いた。

「宮城…今日は、突然悪かった。でもこうでもしねーと、アンタと話できなさそうだったし…次、いつ会えるか分かんねーし。」

「…あぁ…、まぁ今日は特別だ。気にすんな。」


と返事をするが。忍チンとの会話の雰囲気が、いつもとは全く違う。


自分はこうゆう静かな、改まった会話が実は苦手だ。

その相手が忍なら尚更。

大体こうゆう雰囲気の会話は深刻だったり、暗かったりするから。


…別れ話とか…。



大体昨日抱かなかったくらいで大げさだ。
毎日するようなことでもないし、会った時必ずするほうがまるでセックスフレンドみたいで嫌じゃないのか。



「…っ、それで、昼の話の続きなんだけど。」



「………なんで…昨日抱かなかったんだよ。」



そもそも俺は、忍の身体を気遣って、我慢して抱かなかったんだ。それなのになんでこうゆう流れになるんだよ。

もちろんそれは俺の考えだし、それをコイツは知らないが…。というか知る必要はないだろう。



「…そうゆう気にならない時もあるだろ。イチイチ落ち込むな。」

「っ、落ち込むに決まってんじゃん!久しぶりに会うってのに、なんで…」

「じゃぁナニか?お前は久しぶりに会ったら、絶対にしたいのか?むしろセックスするために会ってんのか?」


伝わらない想いとすれ違いに、イライラする。


「っ!!馬鹿にすんな!!そんなんじゃねぇ!!」

「だったら別にいいじゃないか」

「違う!俺が言いたいのはそんなんじゃなくて…!!」

「ハイハイ、忍チンは若いからな。溜まってんだろ?」


「………っ!?宮城…っ!!!」



忍の声の大きさとトーンが一段上がって

そらしていた視線をそちらに向けると


「(しまった………)」


涙を浮かべた忍がいた。




「…ぁ、」

「信じらんねー…。アンタそんな風に思いながら俺を抱いてたのかよ。俺が溜まってるから!アンタに抱かれに来てるって!?ふざけんなっ!!」


ヤバイ。
言ってはいけないことを口走ってしまった、と今更後悔する。35にもなって何やってんだ俺は。


「っく…、アンタにとったらっ、Hなんて身体だけなのかもしれねー!アンタはただ抱いてれば良いんだし!!」





「でも俺にとったら…っ!!H自体なんて本当は好きでもねーしっ!痛てーし…怖いし…次の日もツライしっ……」


あぁ…やっぱり無理をさせていただんだ、と確信する。今更だが。忍を一番分かっているような態度をとりながら、本当は何も分かってなどいなかった。

そんな状態にさせているのは自分なのに、抱いた翌日からはまた一人にさせていた自分に





たまらなく嫌悪感を抱く。







「だけど……っく、俺は……俺は……っ、だ、抱いてもらえないと不安なんだ…」


「アンタが俺に飽きたんじゃねぇかとか…おもっ…っズビッ…」


「…れに…、Hしてる時だけは、アンタを独占できるし、」


「いっぱ…優しぃし…っもっともっと…好きだって気持ちを…伝えたいし感じたぃから…っふ、グズッ…」






「だから………っ、みやぎに…だ、いてもら…のは……っ、…すきなんだ…ぁ…!!」




飾らない、ストレートな言葉が

胸に突き刺さる。



19のくせに、コイツは俺に与えられる一生分の愛情をくれている


純粋に


真剣に





俺だけを………





「………っ、それがっ、伝わんねーなら……もぅいい……」




「……しのぶ………」




「もぉ……わかれ…る………っ」







その言葉を聞いた途端、赤と黒の交じった深い闇に、思い切り突き落とされたような感覚がした。






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