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太陽が壊れた日(山獄)



声が、出なかった。
口内が乾ききって、掠れた空気が情けなく喉から漏れただけだった。


「本気なの、山本。」

「ああ。」


重々しい口調で尋ねる十代目に、山本は笑顔を向けた。
いつもみたいな馬鹿っぽさなんか微塵も感じさせない位、痛々しい位の笑顔を向けた。


「マフィアになる。」


数年前、中学生の餓鬼の頃、こいつは本当にどっか抜けてて、ボンゴレの事もマフィアごっこだとか思ってる位で。
その時はいつもいつも馬鹿みたいな笑顔で。

ボンゴレが本格的に始動するって時も、確かこいつは痛々しい笑顔を向けた。
夢があるって、胸張ってそう言ったんだ。
十代目は少し寂しそうな顔で、それを認めて。

テレビ画面に映るこいつは、中学の時みたいに馬鹿面で。
フラッシュの中でだってその姿はハッキリと見えてたんだ。インタビュアーにいつも通りの笑顔を向けて、観衆に大手振って。



「…けど、山本、」

「ツナ。」



十代目の言葉を遮って、山本は口を開いた。
いつもの笑顔は無い。



「ちゃんと、決めたからさ。」



数日前、妙に重々しい空気の中、やっぱりこいつは今みたいにハッキリとした口調で話してた。
ザワザワと騒ぐインタビュアーも、ぎゃあぎゃあ騒ぐ野次馬も、誰にも惑わされること無く、こいつは、



「……そっか。」

「待たせて、悪かったな。」



振り返った山本の背にバットはもう無かった。
あったのは、狂気が走る冷たい刀。

ボンゴレにとって喜ばしい事の筈なのに、俺は呆然と立ち尽くす事しか出来なかった。
頭が真っ白で、走馬灯みたいに山本の姿が浮かんでは消えて浮かんでは消えて。
冷たい笑顔だけが眼に焼き付いて。


俺は引き止めたかったのかもしれない、だってそうだろ、お前は馬鹿で純粋であの暑っ苦しい笑顔を見せていれば良かったのに。

雨に染まったみたいに静かに笑うお前なんか見たくなかったんだ、俺は、お前に、








静かに扉が閉まっても、冷えた指先は動かなかった。











太陽が壊れた日
(本当は気付いてたんだ、最初から)












デスクの上に置かれた数束の新聞には、数日前に突然引退を表明したメジャーリーガーの馬鹿みたいな笑顔が張り付いていた。



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あきゅろす。
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