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いつかの君へ(雲綱)




嫌な、夢を見た。


悪夢を見ただけなのに、目を覚ましてしまう自分が何処か情けない。
机の上に置いてあった水を飲むが、一向に落ち着きは取り戻せず、指先が小さく震えていて苛々した。



今は眠れそうにもない。



頭の中で素早く判断し、気晴らしにと部屋の外に出た。
自然と足が向かったのは、長年閉じられていた扉で。
その事に自分でも驚いたが、悪夢の所為だと結論付けて、扉を開いた。

その瞬間、不意に何かの気配が感じ取れた。
開くまで気づかなかった自分を叱咤しつつ、素早く身構える。



「ひ、雲雀さん!?」



現れた姿と、間の抜けた声に、一気に緊張感が抜ける。
ふぅ、と息を吐いて、一歩近寄った。



「こんな夜更けに、何してるんだい?」

「え、えーと…眠れなくて。」



頭の後ろに手をやり、苦笑いする姿が、以前の君と重なって行く。



「あの…雲雀さんは、何でこんな所に?」



怖がっている様だから、このまま帰ろうとしたというのに、遠慮がちに尋ねてくる君に酷く驚いた。



「悪夢、だよ。」

「へ?」



正直に答えてしまう自分に少し戸惑いつつ、目の前で呆気に取られる君に、話を続ける。



「白い花に囲まれて、眠ってるんだよ。
約束してあげたのにね。護ってあげるって。」

「雲雀、さん?」



ゆらゆらと、目の前の顔が不安で曇って行く。
嗚呼、違う。そんな顔をして欲しいワケじゃなくて。
僕は



「雲雀さん。」

「!」



小さく、遠慮がちに握られた手に、身体が硬直した。
いつの間にか指先の震えは止まって、不安すら溶けて行く様で。



「もう、俺は、消えたりしませんから。」

「…そう、だね。」



ふわりと微笑む、小さな君を抱きしめれば、背中に優しく添えられた手に

もう一度、誓うよ。





「僕が、護るから。」










いつかの君へ
(護ってあげるよ、君と僕の未来を)




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あきゅろす。
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