やっぱお前が一番甘い(銀土)
久々の休暇、土方は無理矢理銀時に連れられ、ファミレスに来ていた。
朝早くから飯を食う気にもならず、土方はコーヒーだけ注文した。続けて銀時が注文をし始めたのだが、
「チョコパフェ二つと、イチゴパフェと、あーあとこのスペシャルパフェっての。」
ペラペラと飛び出すパフェのオンパレードに、土方は遠慮無しに顔を引きつらせた。
ウェイトレスが表情一つ崩さずそれを承ったのを見て、接客業の偉大ささえ感じた。
「あっれー?どうしたの、大串君。瞳孔ヤバイ位開いてっけど。」
「テメェが朝っぱらから変な物頼むからだろうが…」
男がパフェを頼む事すら少し異様だというのに、目の前の男は平然と四つも頼んだ。しかも朝っぱらから。
考えただけで胸焼けがする。
土方は頬杖をつき、溜め息を一つ溢した。
「コーヒーと、チョコレートパフェでございます。」
少しして、ウェイトレスの高い声が小さく聞こえ、土方の前にはコーヒー、銀時の前にはチョコレートパフェが二つ並んだ。
「やっぱ此処のパフェは美味ェな。」
「つーかテメェ、医者に甘味止められてるんだろうが。」
目の前で恍惚とした表情を浮かべる銀時に、土方は溜息交じりに呟いた。
銀時は二口目を運ぼうとしていた手を止め、ギロリと土方を睨む。
「違いますー、週一回は認められてるんですー。」
「一回の量が多かったら意味ねェだろ。この糖尿。」
「ちょっ、違うからァァ!!糖尿予備軍だからァァァ!!」
鼻で笑ってニヤリと口許を吊り上げる土方に刃向かう言葉も出ず、銀時はパフェに集中することにした。
するとテーブルには自然と静寂が訪れる。スプーンが器に当たる音だとか、カップがソーサーに当たる音だとかが小さく響いていた。
その静寂に耐え切れなくなったのは銀時の方で、小さく口を開いた。
「大串く」
「イチゴパフェとスペシャルパフェでございます。」
カラン、と音を立てて、スプーンがパフェの器を滑る。見事に声を遮ってくれたウェイトレスは、パフェを置くと何事もなかったかの様に厨房へと下がって行った。
「…」
チラリ、目線を前に向ければ、腹を押さえながら身体をブルブル震わせる土方の姿が見えて。
「…大串くーん?」
「ッ…お前ッ……ダサッ……!」
搾り出す様に聞こえた小さな声の直後、耐え切れなくなったのか、土方は大声で笑い始めた。
それに触発された銀時は口許をヒクヒク震わせて、おもむろに土方の胸倉を掴み上げた。
目を丸くする土方に、素早く顔を寄せて、
「なーんだ。」
顔を真っ赤に染める土方に、ニヤリ笑いかけた。
やっぱお前が一番甘い
(煙草吸わなきゃもっと甘いんだけど、土方。)
(死ねェェェ!!!)
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