黒山羊さんからお手紙ついた(小政/死ネタ) 小十郎 元気か?こっちは何時も通りの毎日だ。 成実は相変わらず馬鹿やってるし、野郎共も相変わらず騒がしいったらねェよ。 あれからもう一年か、時の流れは速ェもんだ。お前と離れてからは特に。 体の調子はどうだ? お前の事だ、黙って寝てろって言ったって、どうせ大人しくしてるワケないんだろ? そういや知ってるか?父上もよく言ってたんだぜ?俺は若い頃の小十郎に良く似てるってな。 だから、お前が良く俺には落ち着きがねェやら何やら言ってたけどよ、全部お前譲りなんだぜ?Ha-ha!ざまあみやがれ。 お前が植えた野菜は全部順調に育ってる、安心しろよ。 なんせ、伊達軍総動員でやってんだ。烏一匹入れてねェよ。 そっちはどうだ?どうせ牛蒡やら葱やら植えまくってんだろ?お前の腕なら心配は要らねェけどよ。ああ、植えすぎてんじゃねェのかって心配はしてるけどな。 お前は、まだ怒ってるか?お前を前線から抜けさせた事。 あれだけ食い下がってたんだ、そりゃまだ納得すらしてねェよな。 けど、俺は正しかったと思ってる。 戦場で散るのが華、なんて言ってたけどよ、お前には一日でも長く、側にいて欲しかったんだ。 つっても、すぐに本邸に送り返してやったけどな。あの時のお前の荒れ様は酷かった、嫌でも覚えてるぜ。 でも、小十郎。 本当は会いてェよ。 お前がいねェ城も、戦場も、嫌で仕方ねェんだよ。 こんな事言ったら、お前はまた飛んで来ようとするだろうけどよ、来るんじゃねェぞ? また、俺から会いに行くから、それまで待っててくれ。俺なら大丈夫だから。 もう、これ以上書いてたらキリがねェだろうから、この辺でな。 また文送るからよ、それまで待ってな。 じゃあ、またな、小十郎。 また俺の側に戻るまで、体壊すんじゃねェぞ? かたこ、と綴って封をする。 灯りの火を、真っ白な文に灯せば、青く炎が上がり始める。 空に差し出して、丸い月に吸い込まれる様に舞っていく灰を、ただただ眺め続けた。 最後には、月が歪み始めて、思わず自嘲が零れた。 黒山羊さんからお手紙ついた (白山羊さんのお返事はまだ届かない) [back][next] |