雪の白さを教えてくれた人(小政)
しんしんと雪が降っていた。
もう何日太陽は顔を出していないだろうか、雪は高く高く積もっていた。
政宗は窓から覗く其れにぶるりと小さく体を震わせた後、火鉢の近くに座る小十郎に体を預けた。
雨の日に気だるそうにする猫がいるが、この黒猫もそういった気質があるのかもしれないと小十郎は小さく笑みを零した。
「雪は、お嫌いですか。」
黒猫にしては若干茶色がかった髪を撫で付けながら小十郎が問うと、黒猫はちらりと手の主を横目で見ながら、息を吐くように小さく声を出した。
「………あぁ。」
その声はとても小さいもので、明らかに機嫌の良いものではない。小十郎はまた其れに苦々しく笑い、もう一度髪を撫で付けた。
「小十郎は、雪が好きです。」
小十郎がぽつりと呟けば、政宗はぴくんと左目を小十郎に向けた。其の目は様々な感情を含んでいるらしく、万人には感じ取る事など到底不可能な事だったが、唯一其れが出来る相手がじっと其の目を見ていた。
「Hmm…?野菜も実らないこの季節がか?それに、」
「それでも、好きですよ。政宗様と見る雪は。」
刺々しく言い放った其れを、小十郎の言葉が包む。
黒猫は一瞬戸惑った様だったが、それでも其の言葉に満足したらしく、まただらんと体を小十郎に預けた。
雪の白さを教えてくれた人
(二人で過ごす静寂は怖くないでしょう?)
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