呪縛(親就/死ネタ)
「元就、」
やめろ、我の名を呼ぶな。
「なあ、元就って。」
五月蝿い、黙れ。
「元就、」
五月蝿い五月蝿い黙れ、黙れ、
「元就、」
頼むから―――
「愛してる、」
「愛してる、元就。」
「元就、」
差し出される手も、紡がれる言葉も何一つ掬い上げはしなかった。
きっとそうすれば消えてしまうのだと分かっていたから。
なのに目の前の男は、全て分かった様な顔を見せて、最後に清々しい程の笑みを見せたかと思えば、肩に寄りかかって小さく言葉を吐いた。
暫くの静寂の後、ずるりと生温かい物が滑り落ちて、鈍い音が砂に消えた。
どくどくと流れ出る其れが足に絡み付く様で動けなかった。
見上げた先には輝く日輪があり、その煌々とした光に溶けて消えてしまえばいいと、漠然とそう願っていた。
呪縛
(白銀に赤が憎らしい程に強く)
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