藍(小政)
いつからだったろう、この思いに気がついてしまったのは。
胸の内で芽生えた、ドロドロとした気持ちの悪い感情。
それが何故だか羞恥も喜びも悲しみも全てが織り混ざっているのだと気付いた途端、知ってしまった感情の意味。
嗚呼、そうなのかとするりと心に溶ける筈もなく、俺はただただ自己嫌悪に陥った。
これはあってはならぬ感情に違いはなく、必死にごまかし続ける日々。
だが、その意志とは裏腹に、その感情は膨れ上がる一方で、俺を苦しめ続けた。
俺の名をその声が紡ぐ度に心臓が鷲掴まれた。
その切れ長の目が俺を捕らえる度に息さえ忘れた。
何より大事なその人は、護るべき存在、俺の全て。
だから、気付いてはならないのだ。
夜更けに、涙に濡れた声で俺の名を紡いでいる事も。
俺に触れる指先が少し震えている事も。
何一つ、俺は、
藍
(何かが崩れてしまいそうで)
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