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お買い物
零子は常々、自分にできることは他のメンバーよりも少ないように感じていた。
仲間たちは外で力を揮っているが、零子にはそういうことは難しかった。
世の中には適材適所という言葉がある。
なので零子はすすんで日々の雑事をこなしていた。
きっかけはひょんなことだった。

「買い物に行ってきます。」
「じゃあオレも一緒に行くよ。」

なぜか鏡がついてくることになった。

結果としていえば、鏡が一緒に来た意味などまるでなかった。
鏡は零子の後ろをRPGの仲間のようにぴたりとついてくるだけだった。
そして今は重い荷物を持っている零子を見つめて笑みを浮かべている。
とっても、腹立たしい。

「笑っているなら少しは手伝ってくださいよ。何のために来たんですか。」
「オレは観察者だからね。」

零子は鏡にこれ以上何かを言っても無駄だと悟った。
深い溜息をひとつついて、無限城の、大切な仲間たちが待っている場所へと歩を進めた。

「ねえ、零子ちゃん。」
「なんです?」
「怒ってる?」
「別に、怒ってはないですよ。」

諦めているだけで。
無限城のロウアータウンの喧騒とふたりの足音が交じり合っていく。

「ねえ、零子ちゃん。」
「なんです?」
「いつもありがとう。」

鏡の冷たい指先が零子の首筋に触れる。
胸元を見れば鋭く光るペンダントが輝いていた。

「……鏡?」
「そう。オレの手作り。」

自分の名前と同じものを人の首につけるなんて、

「悪趣味。」

鏡は笑いながらひどいなあ、なんて呟いている。
悪趣味だとは思うものの、こんな風に大切にされるという事に悪い気はしなかった。

「ありがとう。」
「荷物、持つよ。」

笑いあいながら同じ歩幅で歩くその後ろ姿は、少しだけ恋人のようにみえたのだった。


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