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誰のタメ?

「水谷ー」

練習が終わってチャリ押して帰る途中、後ろから呼ばれて、振り向いたら泉がいた。



「オマエ篠岡のこと好きだろ」

2人で並んでのんびりチャリを押してたら、いきなり直球な質問がきた。

「なんで!?」

思わずデカい声で聞き返して、はっとして周りを見たけど誰もいなかった。

「今日こっちオレらだけだぜ」

「あ、そーなんだ」

「で?」

「いや、マジちげーからー」

普通の高校生の会話だけど、オレの心臓は超ドキドキしててヤバい。
泉にも聞こえるんじゃないかってくらい。

「まー篠岡はふつーにかわいーしイイヤツだしな」

「泉は……篠岡のことどー思ってんの?」

「良いマネジ」

「……ふーん」

「んな心配しなくてもとったりしねーよ」

「いや違う!!マジ違うから!!」

「照れんなってウゼーから」

「照れてねーし……つかマジ泉ヒデー……」

「はぁ?」

泉はオレに冷たい気がする。
今日は、特に。

「つか別にいんじゃねーの?まーあんま分かりやすくされっとウゼーけど」

「いやいや、マジちげーって」

「じゃーさっきのアレ何だよ?」

「さっきのアレって?」

「オレが甲子園行くの篠岡のタメっつったら超焦ってただろ」

「あれはさぁ……」

「何だよ」

泉は眉間にぶっといシワを寄せて俺を睨んだ。

「つーかオマエはマジで篠岡のタメに野球やってんのかよ」

「先に篠岡のタメっつったの泉じゃん」

「別に深いイミはねーって」

「ほんと?」

「本当だって」

「よかったー」

思わず胸をなで下ろしてから、しまったって思った。
また誤解をまねくようなこと言っちゃった。
泉は横目でオレをニラんでからおおげさにため息をついた。

はぁ──────。

しばらく沈黙が続いて耐えきれなくなって、何か言わなきゃってとりあえず口を開いたら、言うつもりじゃなかったことまで喋ってた。

「俺はさぁ……」
「俺は、誰のタメとかじゃなくて、ただ甲子園に行きたいんだ。夢。でも誰のタメかっつったら、泉のタメだと思う。泉と一緒に甲子園行きたい、俺」

「…………はぁっ!?」

「…………あ」

しまった!って思ったときにはもう遅くて、泉はなぜか顔を真っ赤にしてオレを見てた。
またウッゼー!とかって言われると思ってたオレはかなりびっくりして、見たことない表情の泉をまじまじと見つめた。

「えっ……」

言うつもりはなかったけど、ていうか絶対ヒミツだと思ってたけど、ここまで来たらしょうがない。
オレは覚悟を決めて、泉の目を見て言った。

「オレは、泉がスキだよ」

「ウッゼェーー!!!!!!!」

泉は、想像以上の大音量で叫んだかと思ったら押してたチャリにまたがって、そのまま超高速で走って消えてった。
後に残されたのはオレひとり。

「なに、今の……」

泉は怒らなかった。呆れなかった。どん引きもしなかった。

顔、超赤かった。

それって、もしかして?

「ヤッベエ……」

勝手にニヤケる顔を落ち着かせたくて、上を向いたら星がスゴくて、あーやべー泉にも見せてーって思って、


チャリに乗って全速力、泉を追いかけて走り出した。




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あきゅろす。
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