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Dear A
▼ 青春っぽくね?あれ、違うか?






「…と言う事で、能力が使えるようになるには"記録術"はとても重要なのです。」



あぁ、相変わらず小萌先生小さいなと思いながら授業を受ける。背伸びしながら黒板書いちゃって、可愛い。ふと横を見たら青髪ピアスが涎をだらだら垂らしながら笑っていたのはスルーしよう。


しかし、パーソナルリアリティだとかぶっちゃけ良く分からない。だけど私は能力使えてる分けだし、と頭の中で言い訳しながら授業を聞いてた。

今の授業は記録術で、能力開発について説明されてた訳だけど、



「(能力って、科学的に開花するもんなの?)」



疑問が1つ浮かぶ。

名前は、能力開発を受けた事がないのだ。それ以前に、学園都市に入るのだって初めてなのだ。だけど、気付いたら能力を使っていた。



「先生ー!」

「はい名字ちゃん、何か質問ですか?」

「科学的に能力を生み出すって事は、生れつき能力が使えるとかはありえない事なんですか?」

「基本的にはありえません。でも稀に"原石"と呼ばれる人達がいます。姫神ちゃんなんかは、そうなんですよー。原石についてはまた今度詳しく説明するのですよー。」

「…はーい。」















♂♀
















「原石、か。」


帰り道、ベンチに座って小萌先生の言葉を思い出していた。

自分が能力を使えるようになった時なんて覚えていない。本当に、気付いたら使えていたのだ。

だとしたら、自分は原石なのではないか。世界にも50人前後しかいないという、稀な能力者なのではないか。だけど何故だろう。それは違うと、本能的に思ってしまうのは。


少しだけ昔を思い出した。
自分にとって精神的外傷となる出来事。




「逃げて!!」

「無理だよもうどこにも道がないっ」

「モルモット共が調子に乗るな」

「嫌だっ戻りたくないっ」

「ああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」






「オイ」


ビクッ。


「一方、通行…」

「なンつー顔してンだよ」



気づけば、学園都市最強の男が目の前にいた。びっくりした。過去に戻ってしまったかのように鮮明に脳内に浮かんで今が全く見えてなかったから。



「あはは、私酷い顔してた?」

「いつもだけどな」



名前は、しゅんとした。
一方通行にいつも酷い顔だと言われたからではない。というか今はそれ所ではない。トラウマとは、人の精神を狂わしてしまうものだ。

しかし名前の事情なんて知らない一方通行は、いつものようにギャーギャーと怒ったりして来ない名前に違和感を覚える。まぁ、実際は一方通行の捻くれた言葉が名前の脳まで届かなかったというだけなのだが。



「(言い過ぎたか?)」

「(私、なんで能力使えるんだ?)」



2人の間に、少しの沈黙が生まれる。しかし噛み合わない2人の沈黙はすぐに打ち消される。



「ねぇ」

「おい」



見事に被ってしまった言葉に、何故かさらに気まずくなる2人。



「何?」

「お前こそ何だよ」

「いや、別に大した事じゃないし」

「俺はもっと大した事じャねェ」

「……」

「……」



一方通行は、ベンチに腰掛けながら思う。何故今日はこんなに気まずい雰囲気なんだと。人とあまり接する事がない一方通行はこのもやもやした感じにイライラさえした。


「(何ですかァこの感じは!!いつものコイツじャねェとこんなにも接しずらいのか!?めンどくせェ。しかし俺から話かけた手前、このまま帰る訳にもいかねェし)」

「あ、のさ」



そんな1人頭の中でぐわぁぁぁ!と悶えていた一方通行に向かって、下を向きながら名前がぼそっと言葉を発する。



「一方通行はさ、やっぱ学園都市最強といえど能力開発を受けたんだよね?」

「…まァ、」



一方通行にとって、能力開発にはいい思い出が一つもないため少しだけ眉間にシワを寄せて答える。



「能力開発ってさ、何歳の頃から受けたの?」

「なんだァお前、何が知りてェ」

「いいから答えなさいよ」

「(命令かよ)…、ガキの頃なんざ覚えてねェが多分物心ついた時じャねェか」

「じゃあ、小学生とか?」

「まァ、そんなもんじャねェか」



そこで、名前は眉間にシワをよせてまた下を向く。



「私…、」



そして、今にも消えそうな声で口を動かす。



「能力開発、受けた事ないんだよね。」

「…何?」

「学園都市に入ったのだってこれが初めてだし、レベルを知ったのだって学園都市に入ってからなの。だけど、気付いたら能力使ってたんだ。」



名前は、なんとなくだけど嫌な予感がしていた。それが何なのか、何故そう思ったのかさえ分からないが。分からないが、何故か表情が強張る。



「多分、少なくとも3歳の頃からちょっとした能力使えてたんだよね。」



はぁ、と息を吐く名前。一方通行はただだまってその横顔を見ていた。

何か、話さなければ。でもどうやって。一方通行は、こういう時人がどうすればいいのかを全くと言っていいほど知らない。それ以前に、一方通行ならめんどくさくてこんな場合はスルーするのは当たり前だろう。
それができなかったのは、いつもとは全く違う消えそうな名前の横顔を見てしまったからか何なのかは分からない。

一方通行は心の中で舌打ちをした。



「(なンで俺まで悩ンでンだよ、めンど臭ェ…)」



めんどくさいと思いながらもここから動けないでいる自分が一番めんどくさいと思った一方通行は、頭をぽりぽりとかいた。



「まぁ、」



その瞬間、隣からいつもの明るい声が聞こえてきた。




「使えちゃうもんは使えちゃうんだから、悩んでても仕方ないよね!能力使えるからって困ってる訳じゃないんだし!なんか、ごめんね、しんみりさせちゃった?」



本当に、本当に急に明るくなったものだから、一方通行は少しだけぽかんとしたが、



「しんみりなんざしてねェよ。相変わらずうるせェな」

「何よ!全く素直じゃないんだから!」

「なんでテメェに素直になんなくちゃいけねェんだよ」



やっぱり、いつも通りの名前の方が接しやすくて。一方通行も、いつもの憎たらしい調子を戻していた。



「でも、なんか話したらすっきりした」



ははっと笑ってベンチから立ち上がる名前。



「ありがとう、一方通行」



そう言ってニカッと笑う名前。そして次の瞬間にはばいばーい!と大きく手を振りながら走り出していた。



「…ったく。騒がしい女だ」



1人残された一方通行は、呆れたようにため息をついた。だけど、



「(…ありがとう、か。)」



多分、この時間は嫌ではなかったと考える一方通行であった。








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あきゅろす。
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