「クソッ」 とある天気のいい日、学園都市最強は悩んでいた。 「(この自販機、1万飲み込みやがった)」 適当に外を歩いていたら喉が渇き近くにあった自販機でコーヒーでも買おうと思い、財布から1万を出しのはいいが(あいにく小銭がなかった。)この自販機、札を入れた瞬間に活動停止したのだ。 金にはとくに困った事のない一方通行だが、流石に1万がなくなるのはでかい。どんどんと自販機を叩くが作動再開の気配はない。 「チッ。」 まぁ仕方ないかと割り切り、もう二度とこの自販機は使わないと決めながらその場を後にしようとする。 「あっ!一方通行!」 「(げ、)」 しかし、物凄く明るい声に引き止められた。声のする方を向くと 「(怪力馬鹿女)」 怪力馬鹿女こと名字名前は、一方通行の方まで小走りで走って来る。 「おうっ!私達よく会うよね」 「何の用だ」 一方通行は、なんとなくこの少女が苦手だったりする。この少女は出会った時からどたばたしているのだ。まぁつまり、この少女のペースには着いてけない。忙しい奴なのだ。 「いや、別に用はないけど。たまたま見つけたから声かけただけ。」 なら、声かけるなとツッコミたくなる衝動を抑えて一方通行はため息を着いた。 「てか、喉渇いた。なんか飲もーっと。」 目の前の自販機を見てガサゴソと鞄の中をあさり財布を取りだそうとしだした少女。 「その自販機、壊れてンぞ。」 「え、マジ?」 「何で嘘付かなきャいけねェんだよ。」 「だって、あんた親切な事出来なさそうな顔してるもん。」 「……てめェ」 「てか、何で壊れてるって知ってんの?」 素朴な疑問を真顔でぶつけた名前。しかし、次の瞬間物凄く厭らしい顔で笑った。 「もしかして、お金飲み込まれちゃった?」 口に手を当ててぷぷぷ、と笑いをこらえる名前。一方通行はその姿に物凄く苛立ちを覚えるがここでキレたらこいつの思うツボだと思い、 「だったらなンだよ」 あくまで気にしてませんが的なオーラを出す。 「いくら?」 「…1万」 「ブッ!!!1万!?1万も!?てか自販機に1万入れる人初めて見たかも!!」 ぎゃははと腹を抱えて笑い出す名前。その光景にとうとう一方通行の堪忍袋の緒が切れた。 「うっせーンだよ怪力馬鹿女!ぶっ殺すぞ!」 「あはは、ごめんごめん。笑い過ぎた。待ってて、今"出す"から。」 しかしキレた一方通行を軽くあしらう名前。そして今出すという言葉の意味をよく分かっていない一方通行をよそに自販機と向かい合う。 そして、自販機に手をかけ、 「おりゃ!」 無理矢理、自販機をこじ開けた。しかもまるで鍵のかかっていないドアを開けるかのように。流石の一方通行も突然の出来事に目を見開く。 「っとー、あ、あった。ほれ、1万。」 そして、中をガサゴソとあさり一方通行が入れたであろう1万円札を取りだし渡した。 「……」 「ありがとうは?」 「…助かった。」 「どういたしまして。」 その言葉にニッコリと笑った少女。一方通行にはその時初めて目の前にいるのが女なんだと確認出来たのは口が裂けても言えない。 「んでさ、提案なんだけど、」 「あ?」 「タダ飲みしちゃおうか。」 「は?」 ニヤッと笑った名前は、再び自販機をガサゴソして缶ジュースを抜き取った。 「あんたコーヒーだよね。私はー、うわっ、まともなジュースないじゃん。お茶でいっか。」 前言撤回。 目の前の奴は女ではなく外道な悪戯小僧だった。 ♂♀ 「ぷはー!生き返るー!」 自販機からもらった(あの自販機は壊れていたからあれは仕方なかったと名前は断言していた。)缶ジュースを、隣にあったベンチに座り飲む2人。 「しかし、学園都市最強ともあろう方が自販機に苦戦するとはね。」 「るせェ。」 「この感じじゃ、すぐにあんたなんか追い越しちゃうかもね。」 「言ってろ。」 物凄く適当に返事をする一方通行だが、名前は楽しそうだった。 「もっと、強くならなきゃね。」 「レベル3が何ぬかしてやがる。」 「いいの。レベルなんて私の物差しじゃないし。」 名前は、己の手を空に翳して見つめた。 「能力なんて所詮ただの数字。大事なのは――」 「?」 途中で言葉を詰まらせた少女を見れば、今までのようにヘラッとした笑いでもニッコリとした笑いでもなく、ただ真剣に翳した手を見ていた。 「オマエは何でそんなに強くなりてェンだ?」 「失うのが怖いからかな。」 そういう少女は、なんとなく儚げだった。その表情気になった一方通行だが、すぐに少女の表情はいつもの表情に変わっていた。 「てか、私には名字名前って名前があるんだから!!スルーしてたけど怪力馬鹿女は酷くないっ!?」 「はいはい。」 そしていつもの一方通行が苦手な名前に戻る。だけど嫌ではなかった。 「(名前、ね…)」 |