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Dear A
▼ 初めての共同作業





「アクセラ、レータ?」



名前は聞き慣れない言葉に白々しい程首を傾げた。事の発端は、つい1分前―――




「しかもさ、あの一方通行と一緒に走ってたよね?」

「えっ、一方通行ってあの?」



昨日の、出来ればなかったことにしたい過去をたった今クラスメイトになった人達に掘り返されてる名前。

あはははー、と頭をポリポリとかき棒読み並に色のない笑い声を出しながら皆と話をしている最中に、専門用語のような、変な単語が出てきたのだ。



「何?アクセラレータって?」

「えっ、知らないの?」

「一方通行はね、学園都市最強のレベル5なんだって。」



名前の回りに集まる人達は、どうやら皆優しいらしい。アクセラレータについての自分が知ってる情報をたくさん教えてくれた。



「なんでも、本当の名前は一方通行じゃないらしいよ?」

「え?マジ?」

「一方が名字で通行が名前じゃないの?」

「そんな名前あるわけないじゃん!」

「っていうか、名前ちゃんと知り合いじゃなかったんだね」

「つーか俺、一方通行って人見たことないんだけど」



どんどん話が反れてしまっているが、これがまた科学が誇る学園都市の高校生なんだと思うと安心する名前。



「で、そのアクセラレータ?がいつ私と一緒にいたって?」

「だから、昨日よ昨日!!コンビニから一緒に出てきてたじゃん。」



名前はうーん、と記憶をたどる。コンビニから一緒に出てきた人なら1人しかいない。あの白髪モヤシ野郎だ。



「あいつが?あの頭白いやつが最強なの?」

「そうだよ!知り合いじゃないんなら、今後一切付き合わない方がいいと思う!!あいついい噂聞かないし!!」



皆の話からすれば、アクセラレータとは学園都市最強で線が一本ぶちギレてて、最強で最狂で最恐らしい。だけど、名前は納得出来なかった。



「あんな単細胞モヤシが、最強なの?」











♂♀













転校初日の学校も無事に終わり、仲良くなったクラスメイト達とバイバイをする。今日は疲れたけど楽しかったなー、と思いながら小さく鼻歌を歌い歩いてた。

すると目の前のコンビニから、ビニール袋一杯の缶コーヒーを片手にぶら下げる白髪を発見する。名前の目が、あちゃー、といったようにゆっくりと細くなる。しかも、名前が向かっている方向と向かい合う形で向かってきたその男。



「げ、」

「……、」



その男を見た瞬間の名前もそうだったが、名前に気づいた男はそれ以上に顔を引き攣らせた。



「昨日はどーも。」

「チッ」



精一杯の笑顔で言う名前に舌打ちで返した一方通行。しかし、名前はこの位では動じない。名前の中で、目の前の偉そうな男に負けたくないというなんとも情けなくて子供地味た意地が発動したのだ。



「すごーい、缶コーヒー買えたんだ。そこのコンビニにはまだあったんだね。私が入る前でよかったねー。」


あっはっはー、とわざとらしく笑ってみる。


名前は自分でも自分は餓鬼臭いとこがあると自負しているが目の前の男だって十分子供っぽいのだ。昨日缶コーヒーだけであんなにもキレたのだから。

現に、名前の挑発にこめかみがピクリと動いた一方通行。名前は少しだけ楽しくなって言葉を紡ぐ。



「っていうか、あんた学園都市最強なんだって?」

「…ベラベラとうっせーンだよ三下が。」



しかし、実際は一方通行の方が大人だったようだ。名前に構うだけ時間の無駄だと思ったのだろう。ぷるぷるとしていた拳を押さえて名前をスルーし通り過ぎようとしたのだ。



「あ、ちょっと待ってよ!」



そんな一方通行を名前は小走りで追いかける。


「ねぇってば!」

「ンだよクソアマ!!」

「く、糞アマっ!?」



しかし、一方通行はポケットに手を突っ込んだまま振り向きもせずに歩き続ける。



「糞アマはなくない?初めて言われたよ!」

「そォかよ」

「つーかこれじゃ私があんたに付きまとってるみたいじゃん!」

「アァ?違ェのかよ」



そして、まるで昨日の如く言い合いながら道を歩く。ただ昨日と違うのは名前が少し楽しんでいたという事と一方通行が本気でうんざりしてたという事。

そして一方通行の適当なあしらいに名前が頬をぷくっとふくらませたと同時に―――



「っ!?」

「デート中すみませーん。一方通行君ー。」



何者かの腕に首を拘束される。チンピラ特有のねっとりとした喋り方をするその男。そして気づけばその他にも一方通行の回りに5人のチンピラがいるではないか。



「あァン?誰だテメェら。」



しかし一方通行は何の焦りもなくただ怠そうにそう言った。

この男達は曾て一方通行に勝負を挑み負けた者だろうとは予想はつく。だが一方通行はそんな弱いやつを一々覚えておく程寛大ではない。

しかし一方で、一方通行に負け悔しい思いをしたこのチンピラ達。そんなチンピラ達のプライドをへし折った今のたった一言に堪えきれるはずがなかった。



「てめぇ!調子乗りやがって!この女がどうなってもいいのかよ!」



名前を拘束していた男が叫ぶ。そんな名前は状況がイマイチ飲み込めず頭を悩ませていた。だが。



「憐れだなァ、オマエ。」

「全くだなぁオイ!!お前といたってだけでこの女が傷つくんだぜぇ?」



あひゃひゃひゃともの凄く下品に笑うチンピラ。しかし次の瞬間―――



「てめぇがだよ糞野郎っ!!!!」



体が、地面と平行に浮いた。しかも物凄い勢いで。

チンピラは訳が分からず宙に浮きながらもぽかんと口を開けていた。目にはさっきまで腕で首を拘束してたはずの名前の恐ろしい笑顔が写る。


そう。名前は自分が拘束されている方の腕を掴み思いっきり背負い投げしたのだ。

だって、状況はイマイチ分からずとも自分が危ない立場にいるのだけはすぐに分かったのだから。


そして、投げられたチンピラは物凄い速度で一方通行へと向かう。



「フン。」



一方通行はその光景を鼻で笑う。それと同時に一方通行のとこまで到達したチンピラは



「っつ?あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ」



一方通行の反射により天高く飛ばされていった。

それを、黙って見届けた名前。キラン、と光って空に消えていったチンピラを見送ると残りのチンピラを見渡した。



「さぁて、よくも私を人質にしてくれたわね。」



コキン、コキンと首を回しながら一歩ずつチンピラ達に近寄る。



「生きて帰れると思うなよぉぉ!!」



そして、足に力を入れてコンクリートを思いっきり蹴る。そしたらコンクリートは砕け散り、変わりに名前はまるで電光石火のように早くチンピラの元へと飛んで行った。

1人の顎を殴れば天高く飛んで行った。1人を蹴ればまるでサッカーボールのように飛んで行った。逃げようとしていた1人の足を掴みハンマー投げの様にぐるんぐるんと回して飛ばした。それに巻き込まれて飛んでいく2人のチンピラ。
そして、運悪く逃げようとしてた奴は一方通行の方へと飛ばされてしまう。


「ちょ…、まっ!!」

「うるせェよ三下。」


そのチンピラが最後に見たのは、一方通行のつまらなそうな真っ赤な瞳だった。


「ぎゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


そして、何も言う間も与えられずに星になったチンピラ達。


「うんうん、ナイスコンビネーションだね私達!!」


空に飛んでいくチンピラ達を、目の上に片手をかざしながら見送った名前。その表情はすっきりしたと言わんばかりの清々しい笑顔だった。その笑顔を一方通行に向ければ、



「フン。くだらねェ。」



ため息をつきながらも満更でもないような表情をしてたとか。






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