「あー、昨日は酷い目にあった。」 「あらあら名字ちゃん。何かあったのですか?」 学校の廊下を、小さな先生――小萌先生と歩く名前。今日はこの学校へ来て初日。まぁ、所謂自己紹介の日なのだ。 名前は昨日のまさかの騒動を思い出し、ずしーんと暗い表情をする。おまけに名前は自己紹介が苦手だった。そんな今日は、朝から疲れた表情を作るのに相応しかった。 「そんな暗い顔してちゃダメなのですよ!」 「(先生小さいなぁ。)はーい。」 先生は驚くほど小さくて童顔でどう頑張ったって小学生にしか見えない。簡単に言うと、マスコットみたいだ。可愛すぎる。ストラップにしたい。 そんなこんなで、教室の前に着いた2人。中からは楽しそうなガヤガヤとした声が聞こえて来る。 ――なんだ。学園都市といえ普通に学校なんじゃん。 学園都市に入って1日目でさっそく2人の能力者に、しかもガラの悪い能力者に出会ってしまった名前は、この学校でやってけるのか不安だった。なぜなら、皆が科学者みたいな人で現実的で理論的で頭が固い人だと思ったからだ。 しかし、中から聞こえてくる声は名前もよく知っている、普通の高校生の会話達で。少しだけ不安が解れた。 「それでは名字ちゃん。合図をしたら入って来て下さいね。」 ウインクをして教室に入って行った先生。先生が教室に入ればガヤガヤしてた教室は一瞬にして静まる。先生、生徒に信頼されてるんだなぁ。と思って少し笑った。きっとこのクラスの人は皆いい人だ、そう思ったから。 ♂♀ 「ねぇねぇ名前ちゃん!」 なんとか無事に自己紹介も終わり(と言っても名前を言っただけなのだが)、自分の席を提供された所で休み時間になる。 一番後ろの席になった名前の周りには、一瞬にして人が集まった。 「名前ちゃん、昨日コンビニで強盗撃退してたよね?」 「あ!それ私も見た!!しかもコンビニも破壊してたよね?」 「強盗撃退にコンビニ破壊!?名前ちゃんって能力者?」 そして質問責めに合う名前。それは皆して昨日の悪夢の事だった。 「(見、見られてたか。)ん、まぁね。」 昨日の悪夢を思い出し少し顔を引き攣らせながら自分が能力者である事を肯定する。 「すっげー!どんな能力なの?」 「部分強化。」 「パワーポイント?」 「うん。体のどの部分でも力を強化する事が出来るの。例えば…」 「…?何?」 名前は、隣の席の男の肩を叩きこちらを向かせる。そして、親指と人差し指を繋げて円を作り彼のおでこへと持って行く。そして至って"軽く"指を弾いた。 「!!??」 まぁ、所謂デコピンをしたのだ。しかしそのデコピンは普通のおでこを突く様なものとは違い、標的になった少年を、数メートル程弾き飛ばした。 「ってぇ!!」 「ははっ。ごめん少年。まぁ、これが私の能力!!」 「っつーか何で俺!?」 「んー…たまたま隣にいたから?」 「…不幸だ。」 こうして、名前は一躍このクラスの人気者となったのだった。 |