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サプライズも程々に(沖新兄→神)
11月2日、23時45分。
秋らしい夜の冷え込みの中、新八は万事屋の前にいた。



ドキドキと高鳴る鼓動を感じながら深呼吸をする。




あと15分、あと15分たてば、この扉の向こうにいる少女の誕生日になる。



誰よりも先に彼女、神楽におめでとうと言うために、まず銀時を居酒屋の割引券で外出させた。
さらにそこに長谷川も呼び付けていたため、今ごろマダオ二人で居酒屋を梯子しているはずだ。




姉にも内密にこっそりと家を抜け出し、誰にも打ち明けていないサプライズ企画はあと15分で始まろうとしている。




手には何もない。
明日になれば、日が昇ってから好きなものを作ってやる予定だが、今は何もいらない。おめでとう、の言葉だけでいい。




「…あと10分」




寒さに震える体を引き締め、背筋を伸ばす。



誰も知らない、新八だけの計画。
の、はずだったのだが。





「おい、そこ邪魔だぜメガネが」




突如聞きなれた声がし、慌てて振り向くとそこには階段を上がって来る黒服の男が。




「お…沖田さん!?」




つい声が出てしまい、口を塞いだ。
神楽が寝ているなら、誕生日その日まで起こさないつもりだったからだ。




「な、何してるんですか、沖田さん…」




なるべく小声で話し掛ける。
沖田も、その音量に従った。




「明日…つーかもうすぐチャイナの誕生日だろィ?一言言いに来てやったんでさァ」




見れば、沖田の手には近所の駄菓子屋のビニール袋がある。
恐らく、中身は酢昆布だろう。




「あと10分かィ…新八君、悪いけどどいてくんねぇか」


「全然悪びれてませんよね?邪魔者扱いですよねそれ」




まさか同じことを考えていたとは思わずに、夜中の万事屋の前で火花が散る。
しかし丸腰の新八に斬り掛かることは沖田もせず、また神楽の誕生日前に騒動を起こすのが嫌なのか睨み合いだけが続く。




残り時間は5分。
こうなったら競争になるかと扉をブチ破る体勢に二人が入った、その時だった。




「あれ、そこに誰かいるの?」




急に頭上から聞き慣れない声がして見上げると、屋根から二人を見下ろす影が一つ。



月明かりに照らされた、神楽と同じ色の髪に神楽と同じ傘、そして胡散臭い笑顔。





「か…かかかかかか神威さんんんんん!?」


「あぁ、チャイナの兄貴かィ」


「へー、俺のこと知ってんだ、アンタ」


「あぁ、単行本は毎巻欠かさず読んでるんでねィ」


「メタ発言はやめて下さい!」




よく見れば、神威の背には大きな風呂敷が。恐らく、中身は食べ物だろう。




「…おい、まさかお前もチャイナの誕生日祝いに来たんじゃねぇだろうな」


「も、って何?アンタらもそうなわけ?」


「待って下さいよ!何で神威さんがこんなところにいるんですか!」


「妹の誕生日祝いに来たに決まってるだろ?訳分かんないこと言うと殺しちゃうぞ」




全く嬉々ではない笑顔を向けられ、新八の背筋が凍る。



しかし、ツッコミ魂がくすぐられるのか口は閉じなかった。





「春雨がこんなところにいたらまずいでしょ…そもそもアンタ、吉原編では神楽ちゃんのことアウト・オブ・眼中だったじゃ…」


「妹放り出した奴がいまさら何言ってんでィ。ハゲろクソヤロー」


「…やってみる?殺し合い」


「望むところでさァ」




刀と傘を構えた二人を制止しかかり、新八は時間を思い出して時計を見た。




時刻は、23時59分55秒。




「やば、あと5秒…!」




慌てて玄関を開けようとした新八に、沖田は刀を抜いて扉を切り刻んだ。
神威の方は、構えた刀で屋根を一気に打ち壊す。




「神楽ちゃん!」
「チャイナ!」
「神楽!」




入り方は異なったが、ほぼ同時に万事屋に飛び込んだ三人は彼女の名を叫びながら寝床である押し入れに駆ける。





そして、新八が先に押し入れに手をかけ、沖田がそれを切り刻み、神威が残骸を吹き飛ばす。



そして、ほぼ同時に。





「「「誕生日、おめでとう!」」」

















「あ、12時…お誕生日おめでとう、神楽ちゃん」


「ありがとうネそよちゃん!
お城でパーティーなんて嬉しいアル!」


「でもよかったの?誰にも言わないで来ちゃって」


「大丈夫アル。銀ちゃんは居酒屋行っちゃったし、他の連中は私の誕生日なんて忘れてるネ」


「そう…じゃあ今日一日、ゆっくりしていってね」


「キャッホー!いっぱい食べるアル!」












(神楽ちゃんおめでとう!)

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あきゅろす。
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