長編
擬似恋愛 8
それを見ている人がいたなんて気付くわけなかったし、
それがどんな風に思われていたかなんてもっと知るわけない。
擬似恋愛 8
びっくりした。
本当に本当に。
朝、教室に入ろうとして見てしまったキスシーンに。
朝の日差しが二人を照らしてまるで映画のワンシーンのようで…
でも、そこにいたのは…日番谷君の彼女であるはずの亜依美ちゃんと、
違うクラスの黒崎君だった。
一瞬意味がわからなくて呆然として、ふと我に帰った時に膓が煮えくりかえるような感情が生まれている事を悟る。
これは、決定的な浮気現場だ。
そう思う。
「最低…」
そう口にしながらも、自然と自分の口元が綻ぶのを感じる。
それはそうだ。
私の好きな人は日番谷冬獅郎。
あのこのものだった日番谷君なんだから。
「‥おはよ亜依美ちゃん!あれ、黒崎君じゃない?どうしたの?」
「あ、いや、じゃあな亜依美」
『あ…うん』
私はずっと、亜依美ちゃんの事が嫌いだった。
その存在が疎ましくて。
だって、私から日番谷君を奪った。
絶対に私の方が好きになったのも早かったし、
好きな気持ちも大きかったのに…
だから、嫌い…憎い。
貴方にはわからないでしょう?こんな気持ち。
「‥日番谷君は?」
『ッ…』
動揺している…それさえも憎い。
『‥私達、別れたの…』
なんでそんな事平然と言うの?
意味わからない…
「貴方が…浮気してたからでしょ…」
『え?』
「そっか…辛いだろうけど頑張って…」
私はそれだけ言って教室を出る。
教室を出て廊下を少し歩くと、視線の先に映ったのは日番谷君。
「お早う日番谷君!」
「…あぁ…」
「亜依美ちゃんから聞いたの…私、役不足かもしれないけど日番谷君の力になるよ?だから、何でも言って?」
もう誰にも渡さない…
絶対絶対渡さない…
自分のものにしてみせる。
(早めに気付かなければいけない)
20100322.
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