長編
擬似恋愛 5
携帯のアドレス帳の3番目には確かに彼女の名前が登録されていた。
擬似恋愛 5
『(帰ったら…観葉植物に水やって…ドラマの再放送見て…)』
「なぁ」
『(ヤバ…課題やらなきゃ…明日提出…)「なぁって!」
『五月蝿いな!何?!』
「あ、予想以上に可愛かった」
『はぁ?!』
ウザイ。
なんだこの男。
無視しようと思ったら腕を掴まれる。
『‥警察呼ぶわよ?』
「それは困る。つーか俺別に怪しい奴じゃねぇから」
『実際の犯罪者も同じ事言う』
「や、まじで人待ってて」
人待ってるって…ナンパか?
可愛い女の子でも待ってるのか?
冗談じゃない。
私も変態扱いされるじゃない。
『ちょっと、離して私さっさと帰りたいの。』
「いやいや、一緒に待とうぜ。」
『あー!もう!一体誰の事待ってるのよ?!』
「冬獅郎。日番谷冬獅郎」
『へ…?』
「と、その彼女?」
…この学校…日番谷冬獅郎って…二人も居たっけ?
いやいや、私は知らないけど。
つー事はあの日番谷でしょ?
そんで日番谷とその彼女を見に来た?!
っておい!ふざけろ!
チラッとこのふざけた男を見るとそれは他校の制服で、しかもあまり頭がよろしくない。
もしかしたら上手く切り抜けられるかも…
『日番谷?そんな人この学校にはいませんよーあ、そだこれから一緒に遊びにでも行きませ「修兵‥?お前何し…柊?」
タイミング悪ッ!
だって日番谷週番だったじゃん!
先生にも呼ばれてたじゃん!
なんでこんな早く…あぁそうか、こいつは秀才君だった…
『‥って、知り合いなの?』
「あぁ…こないだ言ってた幼馴染み…」
思わずもう一度見返した。
そういえば馬鹿とか面倒とか言ってたけど…マジじゃん。
「お前さーメール返してこいよー」
「お前のメールなんて見てねぇよ」
『ちょっと、日番谷君?』
日番谷の腕を引っ張って、日番谷の幼馴染みとやらから距離をとる。
『言ったの?』
「は?」
日番谷は何言ってんだ顔で私を見るから、だから!と言いかけたら言葉を遮られた。
「紹介しろって言ったろ彼女!俺に何も言わないとか水くせーじゃん」
…という事は日番谷は言ってない…
…という事は…他校で私達の事が知られてる…って事よね。間違いなく。
『あんたはどんだけモテるのよ!』
「はぁ?!」
日番谷の背中をバシンと叩くと日番谷は激しく顔を歪めた。
「そういえば…名前柊って…じゃあ…」
『勘が良すぎるのは考えものよ?幼馴染み君。』
確かにウザイ人避けとして始めたわ擬似恋愛。
でも、それは所詮学校内で効果あればよかった。
外でまで噂になったらそれこそ面倒じゃない!
予想外…
取り敢えず、バラすか。
『名前なんだっけ?』
「修兵」
『あぁ…ごめん、苗字』
「檜佐木」
『檜佐木ね。じゃあ檜佐木着いてきて。日番谷も。』
一護以外を家に連れてくるなんて初めてだ。
そういえば家人あげられるくらい片付いていたっけ?まぁ、いっか。
『はい入って』
私は所謂一人暮らしをしてる。
理由は複雑な何かがあるわけじゃなくて、父親ラブな母親が父親の単身赴任に一緒にくっついていったから。
母親は、あんたの事はあまり心配じゃないけど、父さん一人にするなんて気が気じゃないわと笑いながら言って、荷物詰めをしていた。
流石に刺してやろうかと殺意が芽生えたぐらい。
でも特に不便してるわけじゃない。
一応家の事は一通り出来るし。
一護ん家が何かと心配してくれるし…てか遊子とか夏梨とか面倒な親父が。
『んでそこ座る。』
ふと日番谷を見ると、日番谷は言葉にはしてないけど帰りたいオーラ出しまくっている。
人ん家に来て失礼な。
『あんた一応日番谷の幼馴染みみたいだから言うけど、私達ほんとは付き合ってないの』
「なっ?!」
「付き合ってねぇ?」
『たまたまお互いの利害が一致してね。表向き付き合ってるって事にしてる。
だから、私達がほんとは付き合ってないなんてそんな余計な事はまーさーか言わないだろうけど、良い感じだったとか、そういう事も一切口にしないで。
面倒臭いから。』
それだけ一気に言い終えると私はコップに入っていたお茶を飲み干す。
『つーわけで話は終わり。帰った帰った。』
私は今から明日提出の課題をやらなきゃいけない。
こんな事に時間を食ってる暇はないのだ。
日番谷は無言で玄関に向かうと靴を履き、
檜佐木はそのままソファーに座ったまま。
『何してんの。日番谷もう靴履いてるわよ』
「なぁ」
『何』
「じゃあさ、俺と付き合わね?」
「修兵お前ッ!」
『‥はぁ?!』
檜佐木は馬鹿じゃないのかって言いたくなる程笑顔で、
思わず見た日番谷は、ただ驚いた顔をしていた。
(トラブルの対処は二人でする事)
20100214.
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