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長編
疑似恋愛 14







もし最初から、まっさらな所から初めていいならば…
私は…素直になりたい、そう思う。











14




私達の始まりは嘘の塊だった。


どうやってバレないようにするかとか、
どれくらい続けたらいいのかとか、
いつだって自分を中心に考えて、
相手の気持ちを考えようとした事なんて一度もない。
そんなもの必要無いと思い込んで仕方なかった。



なのにいつから…
バレたら終わるんだとか、
いつまで続けられるんだろうとか、
君は私をどう思ってるんだろうとか、
そんな事思うようになっちゃったのか…







私はいつから…






日番谷を好きになったんだろう。






『…日番谷こそ、なんで私の事助けにきたの?』
「おまっ‥それは…」



日番谷が私を睨む。
だけどそこに怒気はなくて、だから私は日番谷から視線を反らさない。


先に地面に視線を落としたのは日番谷。



「あの時間に、鞄だけ置いていなかったら誰でも捜すだろ…」
『あたしは捜さない。』
「‥……なんだよ、なんなんだよお前…」



日が暮れたその場所を照らすのは心もとない街灯で、
微かな灯りに照らされた二人の影が歩道に写し出される。




それを見ながら心の奥で一つ覚悟を決めた私は、
小さく口を開く。




『あたし、怖くなったの。日番谷に嫌われるの。』
「は…?」
『始めは信じられなかったし、信じたくなかった…だけど…』



一歩、日番谷に近付いて日番谷の服の袖を掴む。
言葉が詰まって、視界がボヤけたのがわかって俯く。


いつからこんなに弱くなったのか。
こんなんじゃ顔もあげられない。




「…お前じゃなかったら捜したりしなかった─‥」




日番谷の言葉の意味を考え始めた時には、唇に触れた何かの感触で頭がいっぱいになった。




それが日番谷の唇だと理解出来るまでには少し時間がかかって。




日番谷はあたしの顔を覗き込んで一言



「好きなんだけど」



真面目なその声に、
爆弾すぎるその言葉に、
心拍数が上がる。



『あたしは…』
「言えよ、好きだって」







『…す き‥』




もう一度塞がれた唇。


一つに重なった影を見て、目を閉じた。






(向き合って初めて知る事がある)



20100512.



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