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Spica
悲鳴に近い呟き




―――…お前は強いだろう?




誰?…私は何処にいるの?




―――…だから、一人でも大丈夫だろ





どうして…?私が、強い…?





―――…こいつは、俺がいなきゃ…











「…っゆ、め?」



ひたひたと顔を触ってみると微かにかいた汗に気付く。


それにしても、嫌な夢だ。

よりによってこんな時に見るなんて…。


「彩ー大丈夫か?」

「直兄さん…」


閉められていたカーテンを開けて入ってきたのは直兄さん。

直兄さんはその大きな目を少し見開くと、何も言わずにハンカチを差し出した。


「魘されてたけど平気…、な訳、ないか…」

直兄さんからハンカチを受け取ってそれでうっすらとかいた汗を拭う。

…あ、けっこううっすらじゃない。結構かいてた。


「…授業は?」

「あー、今ないから、様子見にきたんだ。そしたらなんかお前…」

「うん?」


直兄さんは少し言い難そうに言葉を濁らすと「どんな夢見てた?」と聞いてきた。


―――…お前は強いだろう?


私の脳内に先ほどの言葉が浮かんでくると同時に授業終了を知らせる鐘が校内に響いた。


「あ、…じゃ、次俺授業あるから。調子悪いなら寝てろよ」


カーテンを閉められ、数秒後にはドアが開閉される音が耳に入った。


私は胸を撫で下ろす。



「…なんだろう、な、あれ」

少し、身体が震える。

ただ、わかるのはあれが昔付き合っていた男の言葉だったってこと。


そして、ああ言われたのは、自分が悪かったから。

人前で甘えることが恥ずかしくて、いつも素っ気無い態度をとったり、わざと強がってみたり、

それが結局、自分で自分の首を絞めることになった。


私は強くないんだよ、

でも、強くなきゃ、私はこれから生きていけない…。


力を込めた手の甲に、ポタリと生暖かいものが落ちてくる。

その生暖かいものは頬をゆるゆると伝いながら一つ、また一つと甲に落ちてゆく。



「…強くなんかないのに」


泣いちゃだめ、自分が悪いんじゃない。

でも、私はどうしていいか分からない。




「一人じゃ、大丈夫じゃないの…」


最後はみんな、私じゃない誰か可愛い人を見つけて私を手放していったんだ。

そう、夜久さんみたいな、可愛い人を。



「…駄目だね、私は」


右腕にある傷を抑えながら呟いてみる。


小さい頃は、いつか誰か、本当の私を見つけてくれるんじゃないかって信じてた。


偽りの自分を創っている限り、そんなこと、ないのにね。




「誰か助けてよ…」






まだ握り締めていた直兄さんのハンカチをより強く握り締める。
















それは悲鳴にも近い呟きでした

(お願い、私、潰れそうなの)
(おい…、彩)
(…っ)


10/04/21

…続くかも?

*#
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