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Spica
隣は私のものじゃない



私には、つい最近初めて知ったことがある。


いや、会ったときから薄々感じてはいたからそんなに驚きのしなかったしショックも受けなかった。


むしろ、今までそうじゃなかった方が不思議なんだから。


ようは簡単なこと。龍之介と夜久さんが付き合っているということ。












「ふーん…それで?」

「…いや、それでっていうか」

私は最近、颯斗と一緒に度々錫也たちのところでお昼を御馳走になっている。

錫也の料理は美味しい。絶対この人モテるって。


「彩、あーんして」

「え?じ、自分で食べれます」


私は隣にいる羊を払いながら二人の話に耳を傾ける。


「…いや、月子さんがこの前ちょっと小言を言っていたので」

「それより彩って宮地と知り合いだったの?」


ああ、それ聞いちゃいますか。っていうかどこから漏れたんだよ、その情報。

「白銀先輩がこの前一人で唸っていたから声をかけてみたら…」

ああ、あの人か。あとで校舎裏に呼び出しだな。


「まあ…でも、知り合いってだけでそんな話してないし。校内案内してもらったくらいだよ?」

「ふーん…」

なにその納得いってないような顔。みんなしてなによ!やましいことなんて無いわよ!


「で、夜久さんがなにって?」

「ああ…なんだか宮地君が最近おかしい、とか…」

龍之介が?いつも通りケーキ食べてたじゃない。正常正常。

「いや、そういうことではなく…。最近素っ気無いとか、…よく貴女を見かけると話しかけたり、とか」

「え?私が記憶にあるのは…あ、直ちゃん、先生の伝言かな?」


うん、なんでか知らないけど直兄さんは龍之介伝えで伝言をしてくるのよね。どうにかならないかしら。


「…そうですか。取り合えず夜久さんにもう一度聞いてみます」

「宮地の話はどうでもいいから彩、僕とこの後ま「駄目です。羊はちゃんと授業に出ろ」…錫也、男の嫉妬は醜いだけだよ」

「な…っ」


…あら、なんか始まった気がする。

取り合えず私は隙を見つけて羊から逃げるように離れる。


「…戻りましょうか」

「うん」

私たちは聞いていない三人にごちそうさま、とだけ言い、この場所を離れることにした。













「それにしても、僕は二人が話しているところを見たことが無いんですが」

颯斗の質問に、私は思わず身体を震わす。

「そ、そりゃ、悪い気もするから、校内では話さないし。たまに夕飯一緒に食べるくらいだから」

「…彩、僕には貴女が宮地君の「ごめん、私トイレ!先戻ってて」…あっ」


私は思わず近くにあった女子トイレに駆け込む。


その質問は、今一番されたくない。



龍之介の一番は夜久さんだって、誰だってわかってるでしょう。

全くなんでそんなこと聞くのかしら。

私はため息をひとつつく。



本当は、最初からわかってたけどショックだった。

龍之介にそんな人がいるってことぐらい、予想してた。


本人は気付いていなかったけど昔からモテていたし、少し堅いけど優しいし、逆に付き合っていない人がいない方が怪しい。


「…全く馬鹿よね」


龍之介が、あんな小さいときにした約束なんて覚えてるわけが無いじゃない。


なにより、その約束を先に破ったのは私じゃない。








「あーあ、哉太に悪いことしちゃったな」


先ほど哉太を殴った右手がまだジンジンする。


私は今、絶対に人に見せられるような顔をしていない。



「本当に、ばっかみたい」



歪む視界の中、私は思い切り自分の頬を叩く。



本当に、何時までも未練ったらしい女。










大きな深呼吸をして、涙を拭う。










大丈夫、今二人のことを見かけても泣いたりしない。












もう彼の隣は私のものじゃない


(いつまでも、二人でずっと、一緒にいようね)
(…今思えば、あれはただ単に私が彼を繋ぎとめておきたかったからいったのかもしれない)
(そんな約束、覚えてるからって何にもならないのにね)


10/04/10

…なんだこれ(


*#
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あきゅろす。
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